落書き感覚でノートに書く
ジャズはただ聴くだけよりも、書いたほうが良いです。
理解が早まりますし、興味も広がります。そして何より聴くのが楽しくなります。
それはもちろん音楽全般に言えることなのかもしれませんが、ジャズに関しては特に!
それはなぜか?
ジャズって演奏時間の長い曲が多いですよね?
私は生来落着きのない性格だったこともあり、じーっと腕を組みながら何十分も音楽を聴き続けることが苦手でした。
ですから、ジャズを聴き始めの頃は、分からないことが多過ぎるので、長い曲だと聴いているうちにだんだん飽きてくるのです。
しかし、未知の領域のジャズをなんとか理解したいという思いも強かった私。
では、どうしたのかというと、ノートに感想をテキトーに書きながらジャズを聴いていたのです。
文字だけではなく、絵だったり、わけのわからない図形だったりと、とにかくペンを紙の上に走らせていれば、最後まで落ち着いてジャズを鑑賞することが出来たのですね。授業中にこっそりノートに絵などを書いて内職する感覚です。
気軽に簡単な言葉を書く
だから、そんなに大それたことを書こうと思う必要はさらさらありません。
たとえば、ビル・エヴァンスを聴きながら「ベースが動き回っている」とか、コルトレーンを聴きながら「くどいサックスだなー」みたいな、そんなレベルです。
私の場合はそうでした。
表現力のある小学生だったら、もっと気の利いたことを書くんじゃないかというほど「すげー」とか、「かっけー」とかそんな単純な言葉の羅列でした。
しかし、こういう素朴な感想を書き連ねているうちに、分からないなりにもジャズを聴くことが楽しくなってきます。
だからどんどん未聴のCDにトライするようになるわけです。
そのうち、演奏するグループを構成するメンバーを指す「パーソネル」という言葉を知り、人の組み合わせによって内容がかなり変わるのだということを知ると、いま聴いている演奏はピアノが誰で、ベースが誰でということもノートにメモるようになりました。
だんだん耳ができてくる
さらに、ジャズはレーベルによっても、ずいぶんと音質やテイストが違うことを知ると、レーベル名もアルバム名の横に書くようになりました。
書くと、自然と耳が音を意識をするようになるんですよ。
ブルーノートとコンテンポラリーでは、同じジャズマンでもずいぶん音色が違うんだなということにも気付くようになります。
たとえばソニー・ロリンズのテナーサックスの音色は、上記ブルーノートやコンテンポラリーレーベルでは、同じサックス奏者でもずいぶんと音色が違って聞こえるのです。
このようなことを繰り返しているうちに、ジャズを聴くことが楽しくなってくるのです。
今回はどこにポイントを当てて聴いてみようかなどと、鑑賞前の「作戦」を考えるのも楽しくなってきます。
また、ジャズマンの名前を覚えてくると、次は誰のアルバムを買おうかと頭の中であれこれ考えるのも楽しくなってきます。
このようなことを繰り返しているうちに、自然とジャズの知識が増え、少しずつ鑑賞のポイントが掴めるようになってきました。
ネットに書く
ずいぶん前のことですが、20世紀も末も末の頃の話。
少しずつインターネットが普及しはじめました。
iMacを買った私は、せっかくだからということで、私はホームページを立ち上げました。
しかし、ホームページを作っても、書くことがありません。
そこで、今まで何となくノートに書きためていた感想めいたことをアップしはじめたのです。
ここで初めて、私がジャズ喫茶のアルバイト中に書いたメモや、大学の講義中に暇つぶしに落書きしていた内容が役に立ったわけですね。
広がる交流
ネットの良いところは、ダイレクトに反応が返ってくることなんですね。
自分が書いた内容に共感してくれる方が出てくると嬉しいですし、反論がくるとヘコみます(笑)。
ネットを介したやり取りを繰り返すうちに、次第にジャズという共通の趣味を持った、世代も職業もまったく異なる人同士で飲みに行ったりもするようになり、そこで交わすジャズの会話がまた楽しかったりもするのです。
「同好の士」が増えれば増えるほど、自分が気づかなかった視点や、見逃していたポイントに気が付くキッカケにもなるので、勉強にもなるのです。
もちろん、いきなりブログを立ち上げて「情報発信せい!」というわけではありません。それでも、まずは未知のジャズに対して自分なりの感想を書き続けると、けっこう良いことありますよ。
とにかく、書こうとすると、脳が勝手に聴こうとします。
ペンを持つと、なぜか「ちゃんと聴こうモード」にチェンジしてくれるようになるんですね。音楽を聴きながら落書きをしていると。
そのような「回路」が形成されると、ペンを持たなくても、ノートを広げなくても、鑑賞モードに移行することができるようになります。
どうせジャズを聴くのであれば、いろいろな発見があったほうが楽しいですよね。
紙にメモする。
たったそれだけのことが、もしかしたら、あなたの聴覚と感性を驚くほど拡張してくれるのです。
詳しいことは拙著『超・音楽鑑賞術!』(ヤマハ・ミュージック・メディア)にも書いていますので、ご興味のある方はそちらのほうもご一読ください(宣伝w)。