2枚のライブ盤
マイルス・デイヴィスのライヴ盤『フォア・アンド・モア』。
これは1964年の2月12日にニューヨークのリンカーンセンターフィルハーモニーコールで収録されたものですね。
パーソネルは、第二期マイルス黄金のクインテットと呼ばれるメンバーで、
トランペット;マイルス・デイヴィス
テナーサックス:ジョージ・コールマン
ピアノ:ハービー・ハンコック
ベース:ロン・カーター
ドラムス:トニー・ウィリアムス
の5人による2ホーンクインテットです。
当日演奏された曲は、もう1枚の『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』というアルバムにも収録されています。
こちらのほうは、どちらかというとスタティックな演奏が中心に収められています。
逆に『フォア・アンド・モア』のほうは、エネルギッシュかつヴァイタリティある後勢いのある演奏を中心に収録されており、それぞれ2枚のアルバムは独自の個性を発揮しています。
なので、この2枚を両方合わせて聴くことによって、当時の1962月12日のニューヨークので行われたマイルスバンドの全貌があらわになるという感じです。
まあとにかく両方とも素晴らしいアルバムですが、エキサイティングな『フォア・アンド・モア』は、マイルスのライヴ屈伸のライヴ盤どころか、ジャズ全体のライヴアルバムの中でも頂点に近いクオリティといっても過言ではないでしょう。
トニー・ウィリアムス
1にも2にもトニーウィリアムスのシンバルワークがめちゃくちゃカッコいいんですよね。
まだ17か18ぐらいだったと思うんですけどね。
いやもう年齢なんて関係ないですね、表現力においては。
マイルスのことをも後ろからプッシュプッシュしまくりですよ。
このエネルギッシュなドラム、さらにエネルギーだけではなく、この情念を知的にコントロールするテクニックだけではなくもセンスも抜群のドラマーです、トニーは。
当時のマイルスはもう40超えていたと思うんですけれども、そんなマイルスにですね、まだ10代の若造がですね、
「親分、もっと練習してくれ!」と食ってかかったというという逸話も残ってます。
まあ生意気盛りやんちゃ盛りで元気なメンバーだったみたいです。
もちろん、マイルスも負けじとトランペットを吹き、けっこうすごいプレーしてますよ。
すごい表情豊かな演奏。
マイルスは、トニーに煽られてオイラーも頑張んなきゃって思ったんでしょうね。
ハンコックも良い
それに、ハービー・ハンコックのピアノんこれまたかっこいいですしね。
同じフレーズを少しタイミングとかを変えてですね何回も弾きなおしたりしているところとかもすごいかっこいいですし。
さらにバッキングもかっこいいんですよね。
何回も聴いていると、だんだん気が付いてるんです。
最初はトニーのシンバルとか
マイルスののラッパにばかり注目して、
ハンコックのピアノにまで耳はいかないかもしれないんですけれど、だんだん慣れてくうちにハンコックのピアノに耳をそばだてる余裕が出てくるんですね。
ロン・カーターのベース
で、さらにアノロンカーターのベースもなかなかいい働きしてますね。
もうひたすら4ビートを刻んでいる。
こういうカーターがいいです。
後年のヘンにブーミーで音程の悪いベースに比べればね。
自分が主役になってピッコロベースとか弾いているのはちょっと勘弁してほしいですし、そう感じていたジャズファンも少なくなかったでしょう。
しかし、まだまだ新進気鋭の若手だった頃のロン・カーターは、ひたすらマジメにコツコツと4ビートを刻みまくっています。
それで良かったのでは?
ヘンに色気が出ちゃったんじゃないでしょうかね?
しかし、この時期のロン・カーターは、ベーシスト、かくあるべし!とでもいうべきベーシストの鑑です。
えーと、ジョージ・コールマンのテナーサックスについては割愛ですが(笑)、とにかくすんばらしくスゲーアルバムがマイルスの『フォア&モア』なのであります!