ペッキンタイムを知ってるかい?
ブルーノート・レーベルのアルバムはジャケットが素晴らしいものが多いですね。
最近ではユニクロとコラボしたブルーノートTシャツが売り出され、ジャズのことをあまり知らない若者たちも、カッコいいファッションとして着ていますが、Tシャツになってもサマになるブルーノートのジャケットデザイン、さすがです。
で、今回はブルーノートの1574番について。
そう、ブルーノートのアルバムには番号がついているんですよ。
特に1500番台と4000番台は名盤が目白押しで、ジャズ通を気取りたければ、アルバムの名前とともに番号を覚えることが、昔のジャズ喫茶族の間では「カッコいい」とされていた時代があったのだそうです。
もちろん、覚えなければいけないのかというと、別に覚えなくてもいいです。
しかし、覚えているとカッコいいという人も、いまだ多数いることもたしか。
たくさん暗記している人、イコール、頭が良いとされる悪しき「暗記至上主義」の日本の教育の弊害ともいえる現象なのかもしれませんが、でも、なんというか、特にジャズの世界においては「知っている」ことがカッコいいとされる風潮、たしかにありますよね。
で、話はそれましたが、ブルーノート1574番は、モブレーとリー・モーガンの『ペッキン・タイム』のことです。
録音された日は、1958年2月9日の録音。
パーソネル(参加ジャズマン)を紹介すると、
ハンク・モブレー:テナーサックス
リー・モーガン:トランペット
ウィントン・ケリー:ピアノ
ポール・チェンバース:ベース
チャーリー・パーシップ:ドラム
です。
リー・モーガンとハンク・モブレーの双頭リーダーのアルバムですね。
一般的には、モブレーの傑作として知られていますが。
モブレーのテナー、モーガンのトランペットという、フロントに2本の管楽器によるクインテットによる演奏が、ハードバップ好きな人からしてみれば、もう本当にたまらん音の世界なのです。
ジャズの魅力、いやハードバップの魅力、というか、ブルーノートの魅力がぎゅっと詰まっているのです。
皆さん全員絶好調!
言わずもがな、モブレー好調。
もちろん、リー・モーガンのトランペットもやんちゃでブライト。
この2人による2ホーンコンビは相性良いね。
他のアルバムもそうだけど、この盤も特に。
そして、ケリーのピアノはノリノリ、リズミック。
チェンバースもぐいぐいと力強いノリを設定しています。
アレンジも良いし、テーマの部分のアンサンブルは、そうとう練習したんでしょうねぇ。
だってブルーノートだから。
スピークロウ!
個人的におすすめしたいのが、3曲目のスピーク・ロウですね。
ブルーノート盤で、管楽器入りのスピーク・ロウといえば、
ジョン・コルトレーンが参加している『ソニーズ・クリブ』を思い出しますね。
これは、ピアニスト、ソニー・クラークのリーダー作なのですが、こちらも素晴らしい演奏として、多くのジャズマニアの記憶に残っていますが、この演奏に匹敵するっくらい、『ペッキン・タイム』のスピーク・ロウは良いです。
人によっては、ハンク・モブレーのベスト盤という人もいますが、
まあ、そこらへんは、人それぞれの好みの問題でしょう。
個人的には『ソウル・ステーション』が最高だと思ってる派なんで。
ブルーノートマジック
さきほど、「だってブルーノートだから」と書きましたが、それはどういうことなのか。
ブルーノート・レーベルの大きな特徴として、これは社長のアルフレッド・ライオンの方針だったのですが、レコーディング前に、わざわざギャラを払って、ついでに食事も用意して、ジャズマンたちにリハーサルをさせるのですよ。
ギャラももらえて、飯も食える。
ちなみにブルーノートがリハーサルのときに用意する食事は、ジャズマンたちが機嫌よく練習できるようにという配慮から、かなり美味しいものだったそうです。
そうなると、単純にジャズマンたちは「嬉しい!」となりますよね。
練習に身がはいります。
社長(プロデューサー)である、アルフレッド・ライオンさんのためにもひと肌脱いでやろうじゃないか!という気分になります。
だから、一発勝負のやっつけ仕事をしなくなる。
やっつけ仕事をしないということは、クオリティの高い演奏になる。
だからこそ、難しかったり複雑だったりするテーマのアンサンブルにも破綻のない仕上がりになる。
この破綻の無さ具合がつまらないという人もいるし、逆に安心して聴けるという人もいて、これもまた個人の好みに大きく左右されることではありますが、皆さんはどう感じますか?
たしかにスリリングさは足りない気もしますが、そのぶん安定感がハンパないですよね。
安心してノリノリ、気分よくなれることには間違いがありませんよね。
何十年も時間が経っても、時代の風雪に耐え、色あせない名盤がブルーノートには多いのは、そのような理由があるのです。