1960年 油井正一先生が評したマイルスの『クッキン』

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1960年の『スイング・ジャーナル』のディスク・レビューでマイルスの『クッキン』はどう評されていたのか?

油井正一先生の評価を動画で紹介してみました。

当時は『クッキン』ではなく、『クッキング』という表記だったんですね。

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コメント

高松貞治さんからのコメント。

高野雲さん、前も書いたと思いますが『ジャズ・レコード黄金時代』私も持っていますよ!2段にわたって、油井正一さんの解説素晴らしいですよね!それに比べて粟村政昭の解説は💢

💢は、ファラオ・サンダースの『カーマ』評とかでですか?

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TAKESI0506さん⇒高松貞治さん

私は『ジャズ・レコード黄金時代』という本は持ってませんが、粟村さんはクッキンについて77年2月号でレコード評を書いてます。評点は5星です。

 マイルスの「クッキン」のように、五つ星のつくのが当然のようになっているアルバムを担当するのは、正直に申して、ややウンザリである。これが「クール・ストラッティン」や「ブルースエット」のように、耳にこころよいだけでそれ以上の内容のないアルバムなら、たとえ人気盤であろうと、その実体を指摘するのに吝か(やぶさか)でない積りだが、そういう反抗心も、この際は通用しないのだから、大いに困る(否、めでたい?)のである。
 マイルスは、56年の10月26日に、コロムビアへ早く移籍したい一心で、全12曲をワン・テイクで仕上げるという早業を見せたが、この「クッキン」に収められた5曲の演奏は、すべてその日の録音で統一された。マイルスがプレスティッジに残したクインテットのアルバムは、全部で5枚あるが、発足後まもない時期に吹込まれた「Miles」を別にすると、あとはすべて56年の5月と10月の両セッションから適宜ピック・アップして編集されてある。そんなことがどうして重要なのかというと、この一年ほどのあいだに、コルトレーンが長足の進歩を遂げているからで、その分だけ、10月の演奏で統一されたこのアルバムの密度が高いという評価が、十分に成り立つからである。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「ブルース・バイ・ファイブ」をはじめ、すべて時の審判に耐え抜いた名演揃いと言える。

「ジャズレコードブック」のポール・チェンバースの項でも、推薦作の第一として「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を挙げています。

「エアジン」はやはりロリンズとの共演版のほうがいいですね。この「エアジン」は私のもっとも好きなジャズレコードのひとつなんです😇

ありがとうございます!
あの粟村さんも「すべて時の審判に耐え抜いた名演揃い」と評しているのですから、そうとうですね。

エアジン、やっぱりそうですよね!

博 橋本さん⇒TAKESI0506さん

いつもの情報、お世話様です。
有り難うございます。
粟村さんは77年に解説をしていたのですね。

雲村長が紹介の60年発売のレコードのあとにも再発されたかも知れませんが・・・。
その後には68年に同じく日本ビクターよりダブルジャケット、モノラル仕様。1950円で発売されました。
『リラクシン』も前後して発売されました。
当然、その時もスイングジャーナルにレビューは掲載されました。
評者は覚えていません。
検証可能でしたらよろしくお願い致します。
毎度厚かましいお願いお許し下さい。

四部作の中では『クッキン』が一番好きです。 
”マイ・ファニー・ヴァレンタイン” のチェンバースとガーランドにやられました。次に買うレコードもとにかくチェンバースが入っているヤツを探そうと思いました😄
四作の内、これのみ「ジャケットが秀逸なイラスト仕上げ」というのも決定打です。

TAKESI0506さんからのコメント。

そうですね。オリジナルクィンテットの中では一番人気のCBS「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」よりクッキンの方が好きですね。オープントランペットでバリバリ吹いてるのがいいですね。

スイングジャーナルでは「リラクシン」は見当たりませんでしたが、「クッキン」は69年6月号に載ってました。評者はいソノてルヲさん、5星です。

 マイルスの自信にあふれていた時代の最高傑作の1枚であります。この年、5月11日と10月26日に24曲が録音され、これが現在進行形シリーズ(リラキシン、スティーミン、ワーキン及びこのクッキン)に収められたのでした。このアルバム命名の伏線は、その前にリチャード・カーペンターの“ウォーキン”で彼が自己のクインテットを結成することを決心した所からスタートします。
 なにしろ自信家の彼ですから、50年代の不況時代、麻薬に犯され、たたきのめされていた間に次の自己のジャズを考えていたと想像できます。その結果、56年秋に結成された、クインテットのメンバーがこのオール・スターになったものです。(もっとも当時は全員無名でした。)
 ガーランド~チェンバーズ~フィリー・ジョーの3人は後年モダン版のオール・アメリカン・リズム・セクション(オリジナル版はベイシー楽団)と呼ばれ、そのフレッシュで複合的なリズム・セクション・ワークはジャズ史上に輝いています。これに成長途上のコルトレーンを加えたもので内容の点でも文句なしの5つ星LPです。
(1)はマイルスのワン・ホーンで、リリカルな中にニヒリストとしての顔をのぞかせる一幕があり、ミューテッド・トランペットのお手本とされている作品です。(2)はこのLPのためのマイルスのオリジナル・リズム・セクションだけの4小節チェイスは手に汗にぎる快演です。(3)は有名なロリンズの作。マイルスは54年にロリンズと吹き込んでおり、ここではコルトレーンがロリンズと拮抗するまでに成長していることを示します。(4)はメドレーですが、すでに新しい曲と曲のつなげ方を暗示する一方,ガーランドがバップ・フレーズを弾いて喜ばせてくれたりします。とにかくマイルスに駄作はないことを実証する1枚。

「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」と「ワーキン」は粟村さんが書いてますので参考までに載せておきます。ワーキンが68年12月、ラウンド・アバウト・ミッドナイトは69年4月です。共に評点は4星半でした。

ラウンド・アバウト・ミッドナイト
 マイルス5重奏団が残した計5枚のLPのうち「ラウンド・ミッドナイト」を最高作とするファンもかなり多いことと思われる。僕自身の評価では5枚中第3位ぐらいのランクが妥当かと思うのだが、ともあれ印象的な標題曲やジャケット・デザインの出来と共に50年代を飾る名盤の一つであることには間違いあるまい。
 マイルス・クインテットの演奏というのはレコードで聞いてさえ、どこまで事前の打合わせが行なわれたものやら分らぬことが多い。コロムビアへ移ってギルエヴァンスとレコーディングしたいあまりに全12曲をワン・テイクで吹込んでしまった56年10月26日のエピソード(プレスティッジのセッション)などを承知していると、なおのこと「君は君、我は我なり。されど仲良き」式の録音風景を想像してしまう。しかし現実には御大マイルスは輩下の俊英たちに対して苛酷なまでに無言の鞭韃を加えていたものらしい。かつてフィリー・ジョーは往時を回顧して「マイルスのもとでは自由がなかった」と語ったよしだが、独立して自由を得たはずのジョーンズが「アーリューチャ」に聞くような生気溌溂たるプレイをほとんど記録していない事実を考えると、この間の軋轢と実態とが伺えて興味ぶかい。
 吹込みは、「アーリューチャ」が55年の10月27日。残り5曲が翌年の録音である。
 演奏はなべてAクラスの出来ばえばかりだが、無理に難点を探すなら「ディア・オールド・ストックホルム」の構成がやや冗漫に流れる点で、この曲の演奏はブルーノート版に軍配をあげたい。「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」は同時期に吹込まれたものがプレスティッジにもあるが、共に甲乙つけがたい名演でマイルスの名を高からしめた傑作である。採点は4つ星半だが、これはモノーラルとしてのもの。今回の発売はニセ・ステである。

ワーキン
 マイルス5重奏団がプレスティッジやコロムビアに残した56年のセッションには、今や往年のルイのホット・ファイヴの演奏にも比すべき古典的な価値が生まれて来たようだ。これは成長途上のコルトレーンが在籍したという歴史上の事実だけを見てもそうだし、50年代を代表するコンボということで考えてみれば、なおさらその光彩凛乎(りんこ)たるものを感ぜずにおられない。56年の5月と10月、マイルスは2度のセッションを通じてプレスティッジに計25曲の活気に満ちた演奏を録音した。本アルバム中では「ハーフネルソン」が10月の吹込み。残り7曲(といってもテーマの2曲はごく短かいが)5月のセッションからの抜粋である。僕がことさらこういう事実を強調するのは、この前後わずか5か月ほどの短時日の間にコルトレーンのテナー・スタイルが驚くべき早さでマチュリティを獲得して行ったためであり、結論的に言って、10月のセッションをより多く収録した「リラクシン」や「クッキン」をこの「ワーキン」や「スティーミン」の上に置きたいという僕白身の評価にもつながっているからである。
 8曲中のハイライトは「トレーンズブルース」、これに次いでは「ハーフネルソン」が良いと思うが①③のミュート・プレイもまさにマイルスならではの絶品である。
 この頃のマイルスは原曲のメロディをストレートに歌い上げ、しかも余人の追随を許さぬone&onlyの境地を創り上げた。このアルバムを手にしめて、改めて当時のマイルスのプレイを懐しむ人も多かろう。
「アーマッドブルース」はガーランドとしては最初のトリオ編成による吹込み。ちょっとおもしろい。
 コルトレーン逝き、ザ・リズム・セクションの猛者たちも一頃の権勢を失いつつある昨今、ひとりマイルズのみ傲然と王者の座を守り抜く。まさに偉観というほかはない。

意外や意外、これは嬉しいコメントです。

>「ディア・オールド・ストックホルム」の構成がやや冗漫に流れる点で、この曲の演奏はブルーノート版に軍配をあげたい。

もちろん、ミュートのストックホルムも良いのですが、J.J.ジョンソンとオープンラッパで奏でる「霧のストックホルム」が好きな私なのでした。

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あと、この位置づけにも同感です。
>10月のセッションをより多く収録した「リラクシン」や「クッキン」をこの「ワーキン」や「スティーミン」の上に置きたい

意外と、プレスティッジのマイルスに関しては、まるまる意見が一致、アワムリングしていますw

博 橋本さん⇒TAKESI0506さん

再度、有り難うございます。
69年でしたか。お手数お掛けしました😫
所々読み覚えがあります。
新・オール・アメリカン・リズム・セクションはこの文章で覚えました。

「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」で「ニセ・ステ」に触れていますが、当時の日本ビクター発売のプレスティッジのレコードも皆そうでした。従って私の買った『ヴァグス・グルーヴ』もニセステ、1750円です。
この頃からモノラル、ダブル・ジャケットの1950円盤で『サキソフォン・コロッサス』など有名どころを再発し始めました。その後ジャケットもオリジナル趣向(表・裏共オリジナル仕様。厚手のボール紙)に各社が徐々になっていきました。

イヤダローさんからのコメント。

契約を消化する為に、2日で4枚アルバムを録ってしまうって凄いなと思うんですが…。

その当時のジャズのテイクってそんなものだったのか、プレスティッジが異例だったのかわかりません。

この時期から、59年のカインドオブブルーに至る5年位が、マイルスの一番好きな時期です。マラソン四部作全部好きです。

夜な夜なライヴでやっていることを、スタジオで一気に録音しちゃえば、まるまる4枚分作れるじゃんという発想だったようですが、まあ「やっつけ」な発想ではありますが、そして「とっととプレスティッジと縁を切りたい」という思いも大きかったのでしょうが、それでも、ビシッとクオリティの高い演奏ばかりでまとめてしまうのは、サスガだと思います。

イヤダローさんからの返信。

おっしゃる通り、作品のクオリティが高いので、全て許されますよね。四部作どれも素晴らしいアルバムです。

60年代に入るとロックの時代になって、ジャズの扱いも低くなったそうですから、この50年代がジャズが輝いた最後の時代だと見てるのですが、いかがでしょうか。

>この50年代がジャズが輝いた最後の時代だと見てるのですが、いかがでしょうか。
うーん、私は必ずしもそうだとは思っていません。
もちろん、アコースティック4ビートモダンジャズがもっとも輝いた時期の一つだとは思ってますけど。

MrNOBUchanさんからのコメント。

私が最初に買った「クッキン」の国内盤の日本語ライナー・ノーツ(1980年代の再発盤)は、粟村氏でした。収録曲の演奏の「平均密度の高さ(粟村氏が実際に使っていた言葉)」からして、この作品こそマイルスINGシリーズの最高作だと書いておられたと記憶しています。
私個人的には、回す回数の多さ(要は好みの順番ですが)の順番を挙げれば、一位「リラクシン」→二位「スティーミン」→三位「ワーキン」→四位「クッキン」となります。

面白いですね。
私の場合はこんな感じだと思います。

クッキン≧リラクシン>ワーキン>スティーミン

以前は、「クッキン>>リラクシン」だったのですが、少しずつ『リラクシン』の魅力に目覚めてきてからは(初期コルトレーンに対しての寛容度に比例して)、だんだんかける回数が増えてきているような気がしています。

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2019 enchanさんからのコメント。

動画配信ありがとうございます♪ マラソン4作の一曲目はどれも名曲ですね。本作はもちろん、Steamin‘のSally with the〜とか、Workin’のIt never 〜とかメロディーが脳裏にこびりついており直ぐ出てきます。If I were a bellの始業チャイムのキレイなこと…選ぶとしたら私はRelaxin’かな?Prestige ではコルトレーン自身もリーダー作で名演残してますよね。

あくまでざっくりとした印象ですけど、親しみやすさからいうと《イット・ネヴァー~》の『ワーキン』だったり、『~ベル』の《リラクシン》のほうが人気のような感じがします。
『クッキン』はクオリティ高いぶん、ほんのちょっと緊張度が増し、他の3枚よりも聴くときの気楽さが減るのかもしれませんね。

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2019 enchanさんからの返信。

あ、すみません、次からアルバム名は《 》を使います〜

書く人や、出版社によって、それぞれ表記のルールって違うのですが、
私の場合は、
『アルバム名』
《曲名》
にしています。

ま、伝わればなんでもいいと思ってはいるのですが、使ってるPCでは、「きょく」と打てば《》と出てくる設定にしているので、ずっとそのまま続けている感じです。

2019 enchanさんからの返信。

ありがとうございます😭
なるほど、ユーザ辞書登録ですね!

そうです、そうそう、辞書登録です。

K Nさんからのコメント。

NK
CookinかRelaxinか迷うところですね。両者名曲・名演揃いですが、My Funny ValentineのRed Garlandのソロの出だしを以って、鼻の差でCookinというところでしょうか。