絶頂期を過ぎたジャコ・パストリアスについて

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『JAZZ輸入盤ガイド’98』という雑誌に、ジャズ評論家・中山康樹氏の「ジャコ論」というよりも、当時の「ジャコ未発表音源ブーム」に対してのコラムが掲載されていましたので、動画で紹介してみました。

コメント

高松貞治さんからのコメント。

ジャコは精神病に患って、日本に来日した際、奇行が目立って、それをジャズの雑誌が面白おかしく書いて、そのことをジャコの家族は今でも恨んでるそうです。中山康樹さんは確か違う本にも書いてある通り、ジャコの晩年の悲惨さを見たから、動画に書いてあるように思ったと考えます。ちなみに確かジャコの本名はジョンだったと思います。父親がジャコと何回も幼い頃から言っていたからこの名前を使い始めたそうです。

そうですね、ジョンです。
ジョン・フランシス・パストリアスIII世。
世界史の教科書に載りそうな名前(笑)。

Ken Konishiさんからのコメント。

ジャコの”Donna Lee”を聴いた時はぶっとびましたよ。パーカーのアドリブを忠実に再現していましたからね。その後のジャコは伸び悩んだ感じがします。上手すぎ君だったんですよ。もう少し小出しにすれば良かったのに。出来ればウッド・ベースで聴いてみたかったです。ドラッグに関してはパーカーに比べれば小物です。。

ウッドベースのほうはボロボロだったみたいですよ。
過去のスタンリー・クラークのインタビューを思い出したのですが(出典は忘れてしまいました)、かつてジャコとエレキとウッベを取り換えっこして弾きあったたことがあったそうです。
そしたら、ウッドベースはからきしだったので、スタンリーは笑って「お前は片方だけだけど、俺は両方操れる」というようなことをジャコに言ったとのことです。

御駄賃取郎さんからのコメント。

そうだそうだそうだ!!「音楽は進歩し続ける必要があるか?」というマスターのいうとうりだあっ!!!!!
そんな「ジャズは進歩し続ける音楽なのだ」説?って、マイルスの変化やクラシックのマネをすれば「進歩」に見えた時代の妄想だあっ!と、思う。。。

ジャコの顔や生き様をみるにつけ、いつもあのプロレスラーのブルーザー・ブローディを思い浮かべてしまう。顔もなんとなく似ているし、死に方もどこか共通する。。

ジャコにはほとんど全く?といっていいほど関心をもったことはないが、まったくそうとは知らず買ったCDで「お?いいね」とおもったらジャコだったというのがある。フローラ・プリム(プリン?)のアルバム「エブリデイ・エブリナイト」(特に「ザ・ホープ」という1曲。はじめてジャコもいいなと思った。。早春さんはお好きかも?

評論家の人(センセ?)の存在意義って、こうした中山センセのよーに、あれこれ「妄想三昧」してくれるところでせうかね?(笑)とても「凡人」のおよぶところではありまっせん。。

「切り口」の変化だけをとかく追いかける風潮があったみたいですが(今でも?)、同じ「進化」でも、自らの表現スタイルを磨いていくという「深化」もあると思うんですよね。

とかく、ジャズ・ジャーナリズムは、分かりやすい表面的な変化に飛びつく傾向があった(今でもある?)んじゃないかと思っています。

イヤダローさんからのコメント。

この方も、早逝の天才ですよね。《ミュージシャン・来日エピソード集》みたいなスレで、「会場の傍のお堀にベースを放り投げて、泳いで取りに行った」との記述がありましたが、あれ本当なんでしょうか。奇行の多い方なので、「さもありなん」と思ってしまいます。

広島城の堀に投げ込んで、自分で飛び込んで引き上げたらしいですよ。
パンツ一丁、靴下は履いているけれども、靴は履かずにホテルに戻ってきたようです……。

やはり事実なんでしょうか(笑)。ミュージシャンが、楽器放り投げて、お掘りを泳いでいる姿は、中々、お目にかかれませんよ。目撃された方はラッキーなんだか、見てはいけないものを見たんだか、分かりません。あまりに、「非日常」過ぎます(笑)。

娘のメアリーさんが目撃していたそうで、「お父さんがオカシくなった! レイクにベースを投げちゃった」とスタッフに証言。
「なに、湖!?」
実際は、堀でした、と。
外国人には「堀」ってわからなかったのかも。

イヤダローさんからの返信。

おぉ!やはり、本当の話しだったんですね。広島での行状だったのですか。ミュージシャンの来日エピソードって、色々、興味深い逸話があるのですが、その中でもジャコの「お堀り飛び込み事件」は、出色のエピソードでした。長い事「ホントかなぁ?」と思っていたので、疑念が氷解しました。教えてくださって、ありがとうございます。

日本人スタッフは、とんでもない「爆弾」を抱え込んでしまったと、頭を抱えていたんでしょうね(苦笑)。

イヤダローさんからの返信。

「ツェッペリン・ホテル破壊事件」とか、出色な来日エピソードもありますが、「ジャコお堀り事件」も、かなり上位にランクされる所業なので、その時点で、相当、弱っていらしたのかと。ドラッグとアルコールが入れば、色々、問題が起こりますよね。早逝は残念ですが…。

ツェッペリンも来日時はヒドかったらしいですね(笑)。
私が知っているのは「芸者事件(騒動?)」です。
芸者がお猪口に日本酒を注いだら、「もっとでかいコップはないのか? コーヒー・カップかビールのジョッキ、なければバケツを持ってこい!」と騒いだ話(笑)。

あと、「新幹線う●こ事件」(笑)。
ジミー・ペイジが日本で知り合い、ツアーに同行させていた女性のハンドバッグに、ジョン・ボーナムが移動中の新幹線の中でウ●コをしたという話。

なんか、滅茶苦茶っす(汗)。

イヤダローさんからの返信。

それもヒドいなぁ(笑)。さすがに、ツェッペリンのエピソードは出色ですね。広島で原爆記念館を見学して、広島公演の収益は全額寄付してしまうという、畜生とヒューマニズムの危ういバランス…。皆、日本に来ると、ハメを外してしまうのでしょうか。

ビル・エヴァンズも来日した時は、歓迎ぶりに、いたく喜んでいたと聞いています。北海道のジャズ喫茶に、来日時に貰ったサインが飾ってあって、マスターさん曰く、「腰が低くて、謙虚な方でした」との事でした。ジャズマンで云えば、そのエヴァンズのサインが1番羨ましいです。

メーター針の振り幅が広すぎですね、ツェッペリンは。

イヤダローさんからの返信。

その後、ガンズ&ローゼスとかが、来日して暴れていましたが、ツェッペリンの逸話を耳にしているので、大して驚きもしませんでした。東京ドームの役員兼・インハウス・プロモーターだった、北谷賢司さんが著書で、「今は契約もしっかりしてきているので、ハメを外すアーティストも少なくなった」との事です。ツェッペリンはまだ牧歌的な時代の逸話でしょうね。今だったら「ホテル破壊事件」は捕まって、損害賠償ものですよ(笑)。

まったくも~(怒)!な困ったちゃんたちが横行していた時代もはるか昔になりにけり、なんですね。

イヤダロー

公演のキャンセル料も、結局、自分達の負担になりますしね。無茶するアーティストも減っているでしょうね。

あと、クリーンなミュージシャンが増えてきているのかも。
酒もタバコも、もちろんクスリも……。

むしろ、最近はジャズやロックよりも、ヒップホップ(といっても、広すぎるので一部のエリアですが)のディープなヤツらがヤバい気が……。

撃つし、撃たれるし、死ぬし(殺されるし)、抗争絶えぬし。

昔は喧々諤々と「これはジャズじゃない、これはジャズだ」という議論が盛んだったようですが、今は「ヤツはヒップホップじゃない、いや生き様がヒップホップだ」…みたいな、ジャンル論争は、ジャズよりもヒップホップのほうが熱い気がしますね。

私はよく知りませんが、息子が詳しい(笑)。
いろいろ教わってますが、すぐ忘れちゃってます……。

ピアノとベース弾きのしらぴー

初めてコメントさせて頂きます。「ジャコパストリアスの肖像」と「Word Of Mouth」が最高傑作と言われるのも異論はないですけど、それだけで括る(?)のは違うと思います。個人的にはジャコがメインではないですけど、メセニーの「Bright Size Life」とか、コアかもしれませんがトロンボーンのアルバート・マンゲルスドルフがジャコと演奏した「トライローグ」とかを聴くと、ジャコが天才って謳われるのが改めて分かる気がします。「invitation」を初めて聴いたときも衝撃的でしたし、、、

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『ブライト・サイズ・オブ・ライフ』も『トライローグ』も愛聴盤です。
あとは、ジョニ・ミッチェルの『ミンガス』や『シャドウズ・アンド・ライト』。
このあたりが、サイドマンで参加した「光るジャコ」を思いきり堪能できる素晴らしい作品だと思っています。

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ピアノとベース弾きのしらぴーさんからの返信。

「ミンガス」も素晴らしい作品ですよね。
自分が挙げた盤は70年代のモノばかりなのでジャコの全盛期なのかもしれませんが、それでもベースの概念を変えたジャコの功績は計り知れないと思ってます。

同感です!

早春さんからのコメント。

ジャコがアイデアだけの一発屋という点は半分賛成できませんが、残りは大方賛成です。例の2枚とHeavy Weather、8:30、それらに比べると一歩譲りますがTwins ⅰ&ⅱ、もう一声いくならBlight Size LifeかLive at Berliner、この辺りがJacoの才能の最高到達点だと私も思います。他のアルバムは、確かに(自己の音楽を革新させていくという意味に限っての)才能が煌めく一瞬もありますが、ほとんどはこの意味の才能というよりは、もう少し軽い意味での“アイデア”という表現の方が私も正確だと思います。また文章から察するに、あの2枚を聴かずにジャコの音質の悪い秘蔵音源や海賊版ばかりを聞いて騒いでいる輩が当時は多かったようなので😨、中山先生がそれに対して苛立ちを募らせて例の文章をお書きになったことにはそこまて反感はいだきませんでした。

勿論私もジャコは天才だと思いますし(だからこそ中山先生の言う、あの2枚も“アイデア”だけの産物というのは賛成できません。)、中~後期の演奏でも素晴らしいものはたくさんあると思います。

しかし、あの2枚の出来栄えがあまりにも、驚異的なまでに素晴らしかったので、それと比べると他の諸作がマズく聴こえてしまうという中山先生のご意見も一定程度理解できます。あの2枚を聴いたことで過度に期待してしまい、落差にショックを受けるということもあったのではないかと思います。“音楽家”としてのジャコの“才能”は恐らく上の数枚辺りで枯渇していると私も思いますし、あれを聴いてしまうと、ほとんどその中でやったことのヴァリエーションに近い他の諸作を聴いて(事実私もそう疑ったことがあったので)中山先生が落胆してしまうのも分からなくはありません。私も高野さんの、ミュージシャンは常に前進しなければならないものではないのではないか、というご意見には同感なのですが、例えばソニクラなどでも(それほど大きな変化には聞こえないかもしれませんが)毎回アプローチを変えて自己の音楽(個性)の可能性を追求していると思いますし、他のジャズマンでもそのような、決してマイルスのような大きな変化ではないにしても、自己の音楽を毎回ではないかもしれませんが少しずつ少しずつ変化させている、即ち演奏を自分の以前の音楽から少しずつはみ出させていると思います。

ですがジャコの場合は中山先生がご指摘なさる通り、同じフレーズの使い回しが極端に多いですし、Twins ⅰ&ⅱ(Invitation)、Birthbay Concertその他Word of Mouth (Big) Bandでの演奏のアドリブも、物凄い勢いを感じさせるものもありますが「ジャコ・パストリアス肖像」などのCha-chaやHeavy WeatherのHavona、Teen Townなどのソロに比べると全体の構成や演奏の正確さに欠け、楽曲的・作曲的な意味でのクオリティーがかなり落ちているのは否定できないと思います。80年頃までの演奏の音楽からはみ出たものが、変化させた要素があまり感じられず、ヴァリエーションと言われてしまうのも理解できます。

しかし繰り返しになりますが、私は決して後期の作品がヒドイなどと言いたいのではありません。後期の作品は“作曲家”、もしくは常に前進していくという意味での“音楽家”としての側面では中山先生と大方同意見ですが、“プレーヤー”、“演奏家”としてのジャコ ― この側面にはあまり言及されていない気がしますが ― に私はとても惹かれます。80年頃までの自分の音楽を越えようともがく、Broadway Bluesの演奏家としてのジャコ、イタリアでラグレンと超絶技巧を披露するジャコ、フランス・トゥールーズでジャズを演奏するジャコ、胸の内を淡々と語るHonestlyのジャコ、ブライアン・メルビン宅でPurple Hazeをノリノリで演奏するジャコ…。
中山先生はこれらには今ひとつ惹かれなかったようですが、そのヴァリエーションの中にも ― 音楽とは自己表現の側面が大きくあるのだから ― 聴衆を感動させうるものが存在し得ると私は思います。なので中山先生のご意見には大方賛成ですが、先生が言及されていない角度からみるとまた違った味があると思う、というのが結論です。

中山先生のジャコ論を紹介して頂いてありがとうございます。自分の中の「ジャコ・パストリアスの肖像」を再考する良いきっかけになりました。

👍

ソニクラのくだり、もしかしたら少々誤解があるかもしれないので、私の「進化」「前進」に対する考えに関しては、御駄賃取郎さんへのレスをお読みいただければ。

早春さんからの返信。

すみません。誤解してました(汗)。私がソニクラの件で言いたかったのはまさに高野さんの仰る「深化」です。誤った形で取り上げてしまいすみませんでした🙇

家家
そうなんです
考えていることは同じだったんです😎

TAKESI0506さんからのコメント。

スイングジャーナル82年12月号に、
「激突大論争! ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドの是否」と銘打った、油井正一VS岩浪洋三の対談がありました。少々長いですが、我慢してご笑読ください😅

パート1

ジャコ・パストリアスのワールドオブマウス・ビッグ・バンドは今年、オーレックスジャズ祭の“超目玉”として来日したが、はたしてその音楽は賛否両論、「天才だ」「かっこいい!」から「けしからん」「なんじゃあれは」まで議論が百出した。そこで、「私ジャコの味方です」と公言してはばからない岩浪氏、「たんなる浪費」と冷静な油井氏お二人にご登場願い、丸いレコードならぬ四角いジャングルの中で“決着”をつけてもらうこととなった。

SJ“カーン”(と、いきなりゴングのかわりに机を叩いたりして)
油井 勝負はもうついとるよ。あれは“浪費”以外のなにものでもないバンド。これはボクの育った環境にもよる(笑い)。ボクは、弁当箱をあけると、フタについている飯粒の方から丹念にくっていく世代なんだ。それをきれいにくい終わってから、弁当に手をつける。それほど、子供の時から、節約しろとか、もったいないことをするなとかいわれて育てられてきた。だから、音楽でも、やたらゴチャゴチャ人間を雇っているのは性に合わんのだ。ジャコのビッグ・バンドなんて、ボクにいわせれば大浪費もいいところ。目をおおうばかりの大浪費。
岩浪 浪費――大いにケッコーじゃないですか。
油井 そらアンタも大浪費家だもんな(笑い)
岩浪 たしかに、あれだけのメンバーを揃えたビッグ・バンドなのに、ビッグ・バンドらしいところなんてまるでないという意見もわかるにはわかる。しかし、そこが面白いんですよ。その浪費ぶりにこそ、ボクはジャコのパンク精神が表れてると思う。
SJ どっちの味方なんですか?
岩浪 だから、ジャコは素晴らしいということなんだ。ようするにジャコの精神状態っていうのは普通じゃないんだ。つまり、ビッグ・バンドなんだからとか、あれだけ豪華なメンバーを揃えたんだからなんて考えるほうがおかしい。視点を一回転ひっくり返して、パンク的なサングラスをかけて見ると……。
油井 よく見えるの? ホントにパンクしてたりして(笑い)
岩浪 あの無駄、ハチャメチャぶりがいいのです。
SJ 私生活もムチャクチャで、スタッフも苦労してました。
岩浪 池に飛び込んだり、新幹線に落書きしたり、パトカーに乗せられたり……
油井 それじゃまるでバカじゃないのかい?
岩浪 そういう日常の行動とあの音楽は同じ次元にある。そういう意味では、ジャコは非常に純粋なんです。
油井 そのわりには、肝心の音楽に説得力がない。なんでビッグ・バンドになんかしたんだろう?
岩浪 ウェザー・リポートというか、ジョーサビヌルへの反動でしょうね。そりゃ、シンセサイザーからはサックスの音もチューバの音も出せる。しかし、それはどこまでいっても“電気の音”。やっぱりホンモノの楽器じゃなきゃというわけで、結局ビッグ・バンドになったんでしょうね。
油井 その発想がそもそも大浪費につながっている(笑い)。そら、シンセサイザーの音とナマの音は違いますよ。ミュージシャンだったら、誰だってナマの音でパーッとやってみたいと思うでしょ。それを実行に移せないのは、ちゃんと現実を見てるわけで、ジャコは純粋かもしれんけど、かなり社会性に欠けているようですな。
岩浪 今の非常に苦しい業界の中で敢然と一大消費をやったジャコは、だからこそ素晴らしいと。
SJ まずは、ジャコの浪費をどうみるかで1本目は終わりましたが、実際、音楽的な内容についてはどうでしょう。
油井 たしかにジョーサビヌルへの批判みたいなものもあって、ま、今のバンドになったんだろうけど、しかしねえ。たとえば、マイルスがチャーリー・パーカーのグループにいて朝から晩まで2ホーンに3リズムで、とにかくソロのリレーに飽き飽きして、パーカー批判をも含めて新しいグループを作ったことがある。しかし、それも9人編成でかわいいよな(笑い)。ジャコほどオーバーなもんじゃない。
SJ また話がそこに戻る(笑い)。
岩浪 けれどジャコが本当に好きなのはボブ・ミンツァーとランディ・ブレッカーとトゥーツ・シールマンス。
油井 そこで問題が出てくる。はたして、あれだけのメンバー、
の中でランデイとかミンツァーがベスト・ソロイストなのかどうかということ。ジャコのこのへんの判断も甘い甘い。
SJ 最近のディスクレビューの点数も甘い甘い(笑い)

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パート2

岩浪 ジャコがやりたいのは、ギル・エヴァンスの音楽を発展させることじゃないかと思う。
油井 そう、ギルからの影響は絶大だな。
岩浪 ところが、ギルはもう高齢だし、あまりコンサートもやらない。ならオレが――とジャコが乗り出してきた。この意気込みを、まず買いたい。だから、必ずしも完成してるとは思いませんよ、ボクも。なんでトゥーツ・シールマンスと“ネンゴロ”にやんなきゃいけないのか、わからないところもある。
油井 それもそうだが、コンセプションというか、方法に問題がある。つまり、まん中にコンボを置いて、後ろにホーンを置くというやり方。この意味がわからん。音楽的にいいところを思い出してみると、まずジャコのベースはすごい。スチールドラムのオセロ・モリノーもトゥーツ・シールマンスもすごくいい。となると、あのクラスの音楽は、あのコンボだけで十分できるということなんだ。
岩浪 だから、ジャコの人間的な性格を理解すれば、自ずとあの音楽もわかるんですよ。ハチャメチャなところは、実は可能性に見えてくる。
油井 ひいきの引き倒しふうになってきたぞ(笑い)。
岩浪 ジャコはまだ若いんだからどんどんどんどん既成概念を壊していけばいいんですよ。とにかく、あの活気はすごい。
油井 個人の活気ならいいけれど、何10人とメンバー率いてるんだからねえ。
SJ だいたいベーシストがリーダーのビッグ・バンドは、昔から成功したためしがない。
油井 チャールス・ミンガスのビッグ・バンドもしんどかった。
岩浪 そういうジンクスみたいなのを破ってくれるのが、やっぱりジャコだという気がする。
油井 ボクは絶対継続しないと思う。まあ、セクステットが中心で、その都度スポンサーがつけばビッグ・バンドにしてゆくという姿勢。だから、どこまでいってもビッグ・バンドはジャコの理想なんだ。
岩浪 ユートピアです。
SJ 久しぶりに出ました。名フレーズ(笑い)。
岩浪 普通の場合は、コンボなんて持っていないでしょ。たとえばギル・エヴァンス、ギルの頭の中にはマイルスのグループがギルのコンボとして存在していて、自分がやる時はビッグ・バンドでというふうに考えてる。ところが、ジャコはマイルスのコンボとギルのビッグ・バンドを常に自分の中に置いといて、1人で2つを一緒にしようとかんばっている。そこがハチャメチャになってる原因。
油井 ジャコの音楽をトータルにみたら、まず、ベース奏者としてのものすごい技量に感心する。あのベースというのは、ちょっと普通の人じゃ弾けない。
SJ ハイ、池に飛び込んだり新幹線に落書きしたり(笑い)。
油井 だからベーシストとしてだけで、もう存在価値はあるんだ。あのビッグ・バンドじゃ、ジャコの良さが充分に発揮できないきらいがある。
岩浪 そこがエライ。自分のベースを犠牲にしてまでビッグ・バンドじゃなきゃいかんという姿勢。
SJ そこで、ジャコに未来というか、新しい方向はあるんですか?
岩浪 もちろん。一つは、楽器本来のナマの音を重視していること、それとインプロビゼーションの重要性をかなり考えて、そのへんをピシャリとおさえているところに、ジャコの未来がある。
油井 今のビッグ・バンドを解散したら、もっと輝かしい未来がひらけてくるよ。今のままじゃジャコがしんどくなるだけ。ようするにジャコのいうことをきくのはランディとミンツァーだけで、あとは金で集めた外様。ジャコを尊敬してるミュージシャンなんか、1人もおらん。
岩浪 逆に、今の年齢でそこまでいったらオシマイです。正直なところ、ボブ・ミンツァーのソロの内容がどうのこうのまで、ジャコ自身まだ音楽をしぼりきれていないんじゃないか。トルコ行きたいとか、女連れこみたいとか、そっちの方の関心がまだ強いという感じで、生活の100パーセントが音楽じゃないと思う。そのへんのアンバランスが奇行となって出てくる。そこが面白いし、ハチャメチャ大いにケッコーといいたい。
油井 しかしアンタね、ま、コンサートでみるぶんにはいいけど、あれレコードで何回もきく気する?
岩浪 うーん、そのへんはねえ、
油井 そういうほめかただな、危ないな(笑い)
岩浪 だから、結局、完成していないのは認めているわけです。そこが、逆に面白いわけで。
油井 だから、ジャコのライブレコードが何枚売れるのか、ちょっと興味あるんだ。あれはレコード・セールスに結びつくような音楽じゃない。ディジー・ガレスピーがいい例なんだ。あれもかなり経営的にしんどいバンドだったけれど、結局リズム・セクションというかコンボの部分だけが飛び出した。それが今のMJQになったというわけで、ジャコもコンボだけでやった方がなんぼかええんじゃないか。
SJ それがウェザー・リポートだったんじゃないですか?
岩浪 ウェザー・リポートというコンボで、ジャコはがんじがらめになってしまった。それで飛び出して、ビッグ・バンドでパアーッとやった。だから、今さらコンボに戻れないというプライドもあるようなないような。
SJ ようするに、ジャコはどうすればいいんですか(笑い)。このままいけば、それなりに完成していくかもわからないけれど、ジャコらしさが半減する。しかし、このままだと維持してゆけない。とりあえず編成を縮小するのが良策だが、それじゃジャコの理想がなくなってしまう。一ベーシストに戻るべきだろうが、それだとウェザー・リポートにいてもよかった。
油井 まずね、ランディとミンツァーをよそにやって、もっといい相棒を見つけること。それで、トゥーツ・シールマンスともっと仲良くやっていくこと。
岩浪 ボクはボブ・ミンツァーは切れないと思う。ミンツァーは今のビッグ・バンドじゃコンサートマスターみたいなもので、指揮もする役目。
油井 だから、棒をふられる方はあほらしくなる(笑い)。レパートリーにしても考え直したほうがいいんじゃないか。横浜球場できいてたら、メッド・フローリーがそばにきて、「このバンドは何だ」ってきく。「これがジャコで、今やってるのはアンタ、パーカーの〈ドナ・リー〉だよ」っていったら「へえー」ってなもんで苦笑いしてた。〈ジャイアント・ステップス〉なんかもやってるんだが、なんかおかしいんだ。コルトレーンをバカにしてるんじゃないかと、コルトレーン・ファンなら怒りかねないようなアレンジでダメ。だから、トゥーツとの〈スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット〉みたいな方向に行った方がいいんじゃないかと思う。ようするに、ジャコの中にあるジャズの伝統的なものを表現するような方向がいい。
岩浪 ところがジャコにはロックやリズム・アンド・ブルースの要素も入っていて、結局パンク風にしかならない。そこが面白い。このまま好きなことをやっていけばいいんですよ。
油井 さて、いつまでもつか――ということですな。
岩浪 もたなくたっていいんですよ(笑い)
SJ まあまあ。お客さんもみんな帰りましたから、このへんで――。

またまた興味深い記事を投下してくださってありがとうございます。
本当に「笑読」してしまいました。

お二人の言わんとしていることはごもっとも!
ただ、個人的にはファンの心情(少なくとも私の場合)を代弁してくださっているかのような、ジャコ擁護の岩浪さんの主張に私の場合はシンパシーを感じました。

もちろん、理性的な油井先生の主張のほうが「ごもっとも!」ではあるのですが、ジャコが好きだから大目にみようよ的な眼差しの岩浪さんの主張が、いかにも岩浪さんっぽくてイイですねw

いただいたコメントを紹介した動画をアップしました。

ありがとうございます♪

渉 高橋さんからのコメント。

渡辺香津美さんがジャコとセッションした時にブラックマーケットをやろうとしたら譜面が無かったけど、口で指示してセッションしようとするという逸話が香津美さんのチャンネルで話してました
クレージーでビューティフルなプレイヤーと言っていました
やっぱりジャコは間違いなく天才です

光景が目に浮かぶようなエピソードですね♪

長谷川孝二さんからのコメント。

このジャコ評聞いて「あーこの人全然わかってないなぁ。ドラックの怖さを」と思いました、。ジャコは最初の2枚で才能が燃え尽きたのではなくて、その破滅的な生活とドラック。「そこまでの人」っていうのがむしろ思い込もうとしてると思います。
逆な言い方をするなら、ドラックや破滅的な生活の弊害の怖さは「全てドラックのせいではなくて、そこまでの才能しかなかった」と思われてもしょうがないところだと思います。
だからジャコがドラックに溺れたのは残念なことなのです。
そしてこういうジャコ評しかできない人たちに言いたいのは「そもそもジャコはドラックに溺れる前から病んでいて【そこまで】になってしまったのもドラックの前からの問題」なんですよ。
ただ盲信的にジャコを信仰してる人が沢山いることは間違い無いことは確かですけどね。
【だけど、ジャコ好きが全てそうだ】と決めつけてるのは偏見ですね。
語弊があるけど誤解を避けずに言うなら、この方は結局のところジャコの良さをわかってないのだと思います。
ただ一部の側面だけを取るならばドラックにまつわるジャコの行動を批判するのはある意味当然のことかもしれませんね。
「バースデーコンサート」は僕も1番好きなアルバムですね☆

でも、少し考えて思ったのは「ジャコのことがとても好きだったゆえに【裏切られた気持ち】になってしまった」のかもしれないなと感じて来ました。
ひたすらに「残念」なだけなのかもしれませんね。「残念」という意味なら、僕も「彼がもしもドラックに溺れていなければ、ジャコの才能はこんなもんじゃなかったのではないか?】と思います。
「ドラックが彼の才能を引き出した」などという頭の弱い危険な志向は批判するので僕は。
普通の人はドラックに溺れていたら才能があってもなにも出来ずに廃人になるだけになってるから、ジャコはドラックに溺れていなければもっともっと沢山の功績を残せたはずという考えの派です。

>ジャコのことがとても好きだったゆえに~
このくだり、分かります。
あんなに凄かったヤツが、こんなんになっちまってよぉ!(悔)という思いはあったのかもしれませんね。

永井勉さんからのコメント。

突然モンクの永井です・・・WWWWW
ジャコ・パスとリアスに、作曲能力があるとか、ないとか言っている時点で
アホだと私は思います・・・m(__)m
楽器奏者は演奏と動きを両方表現するタイプの人は沢山います・・・
あくまでも人前で演奏するためにプレーしていますジャコは・・・!
ネタが尽きたって? ・・・いいじゃないですか・・・WWWW
モンクは初演のGenius of Modern Musicでほぼ
すべてネタが終わっていると思います・・・WWW
ジャコがいかに凄いか、Youtubeで探してみたら見つけました!!!
ジョニー・ミッチェルのライブ動画です・・・

パット・メセニーが演奏していなくてもフレットレス・ベースで
あそこまでジョニー・ミッチェルのバッキング出来るベース屋さんは
他にいないと思います・・・m(__)m
作曲能力があるこという事はプレーヤーにとって
とても大きな武器になります・・・
しかし一番重要なのはセンスだと私は思います・・・m(__)m

>モンクは初演のGenius of Modern Musicでほぼ
>すべてネタが終わっていると思います・・・WWW

そうそう!
言われてみればその通り!

で、その後のモンクのことを「過去のセルフカバーだ」と揶揄している人っていませんもんね。
あ、もしかしたらチャーリー・ラウズ参加以降の演奏は言われてたのかもしれませんが。

でも、私は「セルフカバー」は悪くないと思いますし、面白ければ(刺激があったり、違う味わいが感じられれば)いいんじゃないかと思っている派です。

その年齢でしか出せない味わいってありますしね。

森高千里のセルフカバーなんか、いいですよ(笑)。
若い頃よりも深みが出ているし♪

永井勉さんからの返信。

確かに・・・m(__)m

MrNOBUchanさんからのコメント。

ジャコ・パストリアスのリーダー・アルバム「ワード・オブ・マウス」、当時SJ誌上でも油井正一氏含め絶賛の嵐だったので、私も新譜(たしか当時2500円払って)で買い求め、数日かけて何度か聴いてみました。何度か通して聴きましたが、黙って結局、お蔵入り、以来押し入れの肥やしになっています。
おそらく私の生まれついての性(さが)、個人的嗜好なのだと思いますが、ウッド・ベースの音色は超超大好きなのに、エレキ・ベースの音色には徹底的に「軽薄さ」しか感じ取れないのです。ジャコに限らず、超絶テクでエレキ・ベースを弾く演奏が聴こえてきても軽薄の累乗でしかなく、全く私の個人的「心の琴線」に触れることはありませんでした。同じエレキでもチャーリー・クリスチャンのエレキ・ギターは大好きで、愛聴しているんですけどね。

いちど出来上がった嗜好にチャチャを入れても仕方がないし、お節介な行為だとは思いますが、いったん「エレキorアコースティック」という先入観を外して聴いてみると発見があるかもしれませんよ。
ちなみに、ジョー・ザヴィヌルは、ジャコが送ったデモテープを聴いて、ウッドベースだと思ったそうです。
逆に、ロン・カーターの70年代くらいのアコースティックベースをアンプで増幅した音は、エレキベースよりもエレキっぽかったりするものもあります。
なので、「何」を使って弾いたかというよりも、「何」が弾かれたのかという、内容のほうにフォーカスしてみるのも悪くはないんじゃないかと。
とはいえ、いったん抱いた先入観や固定観念って崩すのはなかなか難しいんですけどね……。

長谷川孝二さんからのコメント。

多くの人はジャコを評価する時に、新しいアイデアとかにフォーカスして話をします。確かにそういう視点から見れば最初の2枚が飛び抜けてることは事実かもしれません。
だけどジャコの凄さはシンプルにその強烈なグルーヴ感だと思います。
ドラックの影響でグルーヴ感すら怪しくなっている録音を除けば、大半の作品はそのグルーヴ感だけで充分評価されるものだと思います。
どうも頭の硬い批評家さん達は身体で感じるグルーヴよりも頭で理解するアイデアばかりにいく傾向があるように思えます。

御意!!

激しく同意です。

ジャコのグルーヴは、調子悪いとされているときも、ジャコです!
フレーズのひらめきの差や、クリシェに陥っていることもあるのでしょうが、でも、あのグルーヴは不変ですね!!(ほとんどのレコーディングで)

うん、だから私の場合、比較的、世評があまり芳しくない作品も好きなのは、グルーヴ、ノリがジャコそのもので、ジャコを感じられるからだったんですね。

長谷川孝二さんからの返信。

ジョニミッチェル、マイケルブレッカー、ボブミンツァー、ドンアライアス、パットメセニー、トゥーツシールマンス、等のアーティストがジャコのベースでソロを取った時の、あのなんともいえない説得力は正にベースのグルーヴによるものだと思っています。
バンドで一緒に演奏している時にはソロイストはベース奏者に難しいリックとかそんなものよりも【俺をゾーンに入らせてくれる気持ち良いグルーヴ】を期待するものです。
因みにジャコをリスペクトしてるベーシストでめっちゃリズム感の悪い人とセッションしたことありますが、そういうベースはテクニック出せば出すほど邪魔なベーシストにしか感じなかったです。つまりジャコがもしもグルーヴしてなかったら「これほど演りずらい迷惑なベーシストはいない」ということになります(笑)。

この気持ち、めっちゃ分かります!

>ジャコをリスペクトしてるベーシストでめっちゃリズム感の悪い人とセッションしたことありますが、そういうベースはテクニック出せば出すほど邪魔

リズム感悪い私が、あまり人のこと言えたもんではないのですが、私の場合は、ドラマーでそれを感じたことがあります。
故・菅沼孝三氏を手本としていた、「(気分だけ)手数王」な人と合わせた時は、めっちゃやりにくかったなぁ。リズムがよれるし、手数が多いだけでなく、音もデカいので、もう何が何やらでした(苦笑)。

カトウシュンさんからのコメント。

未発表音源や音質が悪い音源を有り難がるのはそのミュージシャンが「好き」だから他人がとやかく言うのは野暮だと思いますけどね。
私もthe whoやトミー・ボーリン、レスター・ヤング、チャーリー・パーカーの未発表音源とか出たり、あったりしたら買ってしまいます。

未発表音源には「夢」がある♪
「スカ」なこともある(多い?)けれど、未発表音源を手に入れる時のワクワク感はたまらない。
……と、私は勝手に思っています。

カトウシュンさんからのコメント。

未発表音源には「夢」があり、その中にも「スカ」がある。
いい言葉ですねぇ( ̄ー+ ̄)
後、チャールズ・ミンガス生誕100周年を記念して名盤やレア音源が発売されたのを高野さんはご存知でしょうか?
コレを知ったときには高野さんに知らせなければと思いご報告しました。
(リンクを張ろうとしたのですがYouTubeの判断で消されるみたいです)

ありがとうございます。

Music Life Clubに詳しい情報が掲載されていました(⇒こちら

だいたい持っているんですが、秋吉敏子も参加している『コンプリート・タウン・ホール・コンサート』が無いので、クリアファイル欲しさに買おうかなと思っています(笑)。

Hirofumi Oishiさんからのコメント。

破滅型の天才は自分の技術や音楽を説明できない人が多い印象がありますが、ジャコは、教則ビデオやインタビュー本を見る限り、自分の技術を言葉で伝えることができる稀有なタイプだったような気がします。元々マイアミ大学でベースを教えていた時期があるのも影響しているのかもしれません。そこからすると、もしジャコが今でも生きていたら、案外バークリーかニュースクールあたりの先生におさまって、演奏活動しつつ後進を育てていたかもしれないな〜とか思ったりしました。そんな落ち着いたジャコを見たいような見たくないような、微妙なところではありますが…。

おっしゃるとおりだと思います。
教則ビデオでジェリー・ジェモットを相手に語るジャコの姿は、カッコいい兄ちゃん先生って感じでした。
そうそう、メセニーと同様、若先生だったんですよね、ジャコは。
私は、演奏活動をたまにして、先生やっているジャコの姿を見てみたかったです。もしそうなっていたら、世界各国からすごい数の生徒が集まっていたことでしょう(笑)。