悪趣味?! ポール・チェンバースのアルコ奏法~デイヴ・ブルーベックのレコード評/『ジャズ・レコード・ブック』紹介

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ポール・チェンバースのアルコは悪趣味?!

粟村政昭・著『ジャズ・レコード・ブック』掲載のジャズメン評を紹介しています。

コメント

博 橋本さんからのコメント。

SJ誌で粟村さんの下す『クール・ストラッティン』への三つ星評価を読んで頭をモヤモヤさせたり、「ジャズ・レコード・ブック」を頼りに、貴重な小遣いで、年に数枚購入するレコードを厳選していた頃から、粟村さんは私にとってはやはり、恩師であったと思います。
かと言って『クール・ストラッティン』の三つ星や、チェンバースのアルコへの評価は頷けません。
「粟村さんの評価は如何か?」を楽しむ事が、より私にジャズを教えてくれたと思っています。
チェンバースの弓弾きは大好きです。『クール・ストラッティン』でも勿論やっています😄
アルコ、ピチカートに拘らず、稀にソロに合わせて微かに聞こえてくるチェンバースのハミングも、こちらのジャズ心をそそります🎶

モヤらせる人だったんですね😄

TAKESI0506さんからのコメント。

粟村さんは、67年のスイングジャーナルで「ベース・オン・トップ」のディスクレビューを担当しています。粟村さんがディスクレビューを担当するようになったのはこの年からなので、これは最も初期のレコード評ですね。評点は4星でした。

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『ドラム・ソロが大好きというファンは未だに大勢いらっしゃると思うのだが、ベース・ソロが大好物という変った御仁には寡聞にして僕は出会った事がない。僕自身にしてからが常々無計画に盛り込まれるベースソロの長さには辟易しているし、ピアノ・トリオに聴く延々たるベースのソロには、嫌悪を通り越して時に憎悪さえ覚える程だ。
 ところがここにそのベースを中心としたアルバムが誕生した――と言っても実際に吹込まれたのは未だモノーラルしかなかった時代のことなのだが、ともかく発売当時の感想は「これはエライことですよ」の一言に尽きていた。ところが意外にもこの演奏が素晴しかったのである。主役を演じたのは当時若手のナンバーワン的存在であったポール・チェンバースだが、このアルバムを製作するに当って賢明にも彼はベース技術の開陳に終始する愚を避け、自身の周りにピアノ、ギター、ドラムスを配することによって、「ベース・ソロ」ならぬ「ベースを中心としたカルテット」の演奏を目指したのであった。
 このアルバムはやがてジャズ喫茶の常連LPの仲間入りをしたが、ベース・ソロが始まった途端に一息入れてコーヒー茶碗に手をのばす風習はこのLPに限っては通用せず、ファンは悉く満足気にチェンバース一党の四重奏を傾聴したのであった。
 本アルバム中一番快調なトラックは「You’d Be So Nice to Come Home To」であろうと思われるが、当時無名のケニー・バレルとの交換ソロが誠に見事。ハンク・ジョーンズもこのトラックを含めて全編好ましい助演ぶりを聞かせている。
「イエスタデイズ」は名演としてたびたび引用される演奏だが、ぼくはベースの弓弾きソロに共感出来る素質を全く欠いているので、推薦の役目はご辞退申上げたい。他のベースマンが軒並みにこういう企画をやり出すとウンザリだが、ボンボンと鳴るだけがベース・ソロだとお考えの向きにはぜひ一聴をお勧めしたい好アルバムである』

当時粟村さんは34歳の若さですから、内容も若々しいというか、言いたい放題というか……😥

大和明さんは、岡崎正通さんとの共著「続・モダン・ジャズ決定盤」の中でチェンバースのアルコ・ソロについて語ってます。

『最後にチェンバーズの弓弾きソロについて、批判が多いようであるので言及しておこう。実は僕も彼のアルコ・ソロを買っていない一人である。なぜならばピチカートにおけるような味わいに欠けているからだ。特にスローものでその欠点をさらけ出している。きついことをいえば、ただギコギコ鳴っているに過ぎないこともある。『ベース・オン・トップ』でのプレイにしても例外ではない。実際処々気の抜けたような、野放図とも茫洋ともいえるニュアンスに乏しい音を出す。大体ベースの魅力の最たるところは、あの微妙な音色の移ろいの中に味わいのすべてがあるといっても過言ではない(だから筆者はそれを味わえぬ電気ベースもまた好まない)のだが、彼のアルコ・ソロは無神経なほどにそれを無視した単なる音に終わるプレイとなっているのである』

私も、ベースソロはピチカットの方をより好んでいます。

「ベース・ソロが始まった途端に一息入れてコーヒー茶碗に手をのばす風習」があったんですね(笑)。まあわかるような気もしますが。ベース弾いてる私ですらそういう気がありますから……。まあ嫌悪や憎悪までは覚えませんけど。

粟村さん、当時34歳だったんですね。
若い!

というか、最近では「誠に見事」というような表現つかいませんよね。
あと『ジャズ・レコード・ブック』で多用される「立派である」という表現も。
時代を感じるとともに、今だと「上から目線」だの「エラそう」だの色々と言われそう。まあいつの時代も「お前ナニサマだよ?」と言われやすいのが評論家にはつきまとう業のようなものなんでしょうけど。

アルコに関しては『スイング・ジャーナル』のほうは、『レコード・ブック』ほどきつい評価は書いてないですね。むしろ大和明氏のほうが辛辣ですね。
私も昔、この本読みましたよ。
もしかしたら、長らく《イエスタデイズ》を受け付けなかったのは、この本に書かれた内容が頭の隅っこにあったからなのかもしれません。

藤野陽一さんからのコメント。

ポール・チェンバースのアルコ奏法に心酔しているジャズコントラバス初心者です。私にとって彼のべースソロはピチカット奏法ではなくアルコ奏法なんです。特に世界一美しい娘のアルコソロは最高です。そして何よりも衝撃的だったのはジャストフレンズの物凄く速いアルコソロです。同じナンバーを聴いてもアルコ奏法が入っているだけで何か得した気分になるんです。ウォーキングからアルコソロそしてウォーキングといった流れは至福の一時です。クラッシックの奏法をジャズに積極的に取り入れた彼のセンスは素晴らしいの一言ですね。私はジャズコントラバスの最大の魅力はソロではなくウォーキングだと昔から強く思っていることもアルコ奏法に惹かれた一因かもしれません。

嬉しいコメントありがとうございます。
コントラバスの練習がんばってください!
そして、いつかチェンバースのように弾いてください。

Kawai Andyさんからのコメント。

私も雲さんの仰る通り、アップテンポのアルコ弾きのチェンバースに魅力を感じます。
確かにいわゆる4ビートの王道ウォーキングベースも魅力的でノリが良く気持ちいいのですが、ピチカートのアドリブソロより、雲さんの仰る通り、私もアップテンポのアルコ弾きのチェンバースに魅力を感じます。
マイルスの「Milestones」のBilly Boyやバド・パウエルの「The Scene Changes」のDown With Itなど、演奏を焚き付けるようなアルコ弾きはかなり効果的で印象的です。

おお~、私も《ダウン・ウィズ・イット》のアルコソロ好きなんですよ。
あのアルバムのほの暗い雰囲気をより一層強調するスパイスのように感じています。

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