ソウルやビートルズを吹くハンク・モブレイ

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ジョージ・ベンソン参加

1968年1月19日に録音されたテナーサックス奏者、ハンク・もブレイ(モブレー)のリーダー作、
『リーチ・アウト』は好きですか?

これはジョージ・ベンソンとの共演で有名なアルバムです。

しかし、珍しいですよね。

ブルーノートでジョージ・ベンソンっていうのはね。

このアルバムは、モブレーファンというか、オーソドックスなハードバップ好きからしてみれば、忌み嫌われる要素満載だったりで、あまりこの作品が好きだという人、見たことないんですよ。

少なくともいらっしゃらないんですね、私の周囲には。

その原因となっているのがおそらく1曲名のタイトルナンバー《リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア》なんだと思うんですよね。

これはフォー・トップスのヒット曲。

なんでソウルのナンバーをジャズマンが演奏し天然!みたいな感じでスルーしている人もいるんじゃないでしょうか。

ヒット曲やっもんじゃねぇみたいな感じで、硬派なジャズマニアは思っているのかもしれませんんね。

ただ、個人的には聴かず嫌い嫌いが多いような気がするんですけれども。

商業路線?

とはいえ、いやいやちょっと待ってくださいよと言いたい。

このアルバムすべてのナンバーがソウルというわけではないんですけどね。

ジャズという枠組みで考えれば、確かにちょっとヒット寄りのナンバーばかり演奏していて、なんだか商業路線に魂を売ったのか、ブルーノートよ!と思うかもしれませんけれど、ひとたびジャズという枠組みをいったん取り払い、ハンクモブレーという「テナーサックス奏者の個性」という目で見ていただくと、どうなんでしょうね。

いいんじゃないんでしょうか?

モブレーの魅力

ハンク・モブレーの持ち味って何でしょう?

まろやかさとコクじゃないですか。

もちろん録音年やアルバム、曲によっては、結構タフでハードボイルドな演奏もあったりもしますけれども、おそらく皆さんが思い浮かべる彼の代表作『ソウル・ステーション』などを聴けば、本当にまろやかでコクがあるテナー奏者だとは思いませんか?

ちょっと押しは弱いけれど、控えめなところ。

多分、モブレー好きの方は、皆さん理解していると思うんですよ。

そう考えるとですねハンク・モブレーの良さを引き立てるナンバーは、必ずしもジャズではなく、ソウルミュージックもアリなんじゃないかということが分かってくると思うのです。

ソウルでもいいんじゃない?

例えば1曲目の《アイル・ビー・ゼア》なんかは、一瞬ギタリスト、ジョージ・ベンソンのアルバムかと思っちゃうほど、モブレー、なかなか登場しないんですね。

ずっとジョージ・ベンソンがソロを弾いているので、一瞬ハンク・モブレーというリーダーの存在を忘れてしまうんですけれども、ベンソンが思う存分弾ききった後にいよいよ真打登場みたいな感じで、本アルバムのリーダーのモブレーが登場するんですね。

良いフレーズを引っ提げて「真打ち登場」って感じなんですよ。

といっても、仮面ライダー電王のように「俺参上」みたいな感じの登場の仕方ではなく、あくまで控えめな感じがモブレーらしいといえば、モブレーらしい。

そして、このナンバー、曲調自体がすごくモブレーの個性に合っていると思うんですよね。

なので、ちょっとダサいメロディーと思うかも知れませんが、そりゃまあ現代の耳で聞けばちょっと野暮ったいというかイナたいというか、そういう田舎くささがあるのかもしれませんが、これもまた、モブレーというテナーサックス吹きを引き立たせる素材の一つがジャズでったり、またソウルミュージックでもあるんだなということが分かりいただけるんじゃないかなと思います。

2曲目、けっこう硬派

もし、もっとストレートアヘッドなジャズ聴きたいという人はですね、1曲目で聴くのをやめないで、2曲目も聴いてみてください。

これもなかなかいい曲ですよ。

今までゆるく走っていた車が、いきなり快速調で飛ばすような感じ。

モードジャズ時代特有のテイストと、ちょっとハードに迫るような曲調の始まりにグッときます

これ確かギタリスト、グランド・グリーンのアイドルもメンツに入っていた《ジャン・ドゥ・フルール》という曲あるんですけど、私あの曲大好きなんですが、ああいう《ジャン・ドゥ・フルール》みたいな曲調が好きな人からしてみれば、かなりツボにはまる演奏だと思うんですね。

なので、硬派なジャズマニアからは無視されまくっているかもしれない軟派路線のジャズと思われているこのアルバムですが、目玉曲をすっ飛ばして、2曲目から聞いていただくとよろしいんじゃないかと思います。

他にも色々聴きどころはたくさんあるんですけれども、まあこのアルバムはイメージ的にも損しているんですよね。

ジャケットとか。

パリのエッフェル塔をバックに、観光者気分で嬉しそうなモブレー。

いかにもって感じのジャケットのイメージで減点されちゃっている感は否めません。

ただ、聴かず嫌いさんのジャズ心のエンジンを発動させるような要素は確かにあるので、先入観を持っている人ほど、先入観を取り除いて聴いてみて欲しいです。

意外と聴きどころが眠っているアルバムだと思いますよ。

ジョージ・ベンソンとの相性部も悪くないと思いますし。

ギターに合うテナーサックス

あと、そうそう、忘れちゃいけないもモブレーのリーダー作。

同じくブルーノートね。

『ワーク・アウト』。

これ、ギタリスト、グラント・グリーンとの共演ですけど、グリーンともすごく良いコンビネーションなんですね。

あと、グリーンといえば、あのビートルズの《抱きしめたい》を演奏した、その名も『抱きしめたい』というアルバムがあるんですね。

このアルバムでのモブレーは、コクのあるフレーズを吹きまくってますねぇ。

地味だけどw

そして、またもやグランド・グリーンのギターと合っている。

彼のまろやかでコクのあるギターのサウンドは、ギターのサウンドと調和するんでしょうね。

ま、この曲も硬派なジャズマニアからしてみれば「またしてもヒット曲かよ」なのかもしれませんが。

ストレートアヘッドなジャズファンからしてみると、触手がわかないエリアかもしれませんが、まあ、そのあたりは好き好きで。

でも少なくとも、モブレーのテナーには合ってるよ。

もちろん、オーソドックスな4ビートな『ソウル・ステーション』も良いですし、未聴の方は是非聴いて欲しいと思いますけど、ちょっと異色作かも知れませんが、ソウルやビートルズをやってるモブレーも悪くないんで、聴いておくんなさいまし。

ということで!

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