『40年代のジャズ/バップからクールへ』(東芝音楽工業株式会社)のライナーノーツ(執筆:岩浪洋三)を読んでいます。
コメント
博 橋本さんからのコメント。
コピーの細かい文字ですみません。連日のup作業、恐縮です。
このアルバムについては、トリスターノを扱った以前の動画の書き込み欄でTAKESI0506さんがSJ誌67年7月号の児山紀芳さんのレコード評を揚げて下さっています。
『カフェモンマルトル』2022年3月18日付けの<『鬼才』の鬼才っぷり>でも読めますね。
17歳のウイントン・ケリーと19歳のロリンズに憧れた、ジャズ 1 年生の高校生の頃の愛聴盤です。
ああ、そういえばコメント欄ではお二人のやり取りが残されていますね。
TAKESI0506さんからのコメントで、児山氏評は、
『四◯年代のジャズ / バップからクールへ』は67年7月号で紹介されてます。価格は1700円、評者は児山紀芳さん。(中略)評点は共に5星でした。
そして、『40年代のジャズ/バップからクールへ』の岩浪ライナーノーツは、以下の内容でした。
「40年代のジャズ/バップからクールへ」は、イギリスにおけるモダン・ジャズ評論の最高権威アラン・モーガン(名著「モダン・ジャズ」の著者)がEMI社の委嘱を受けて、ぼう大なキャピトル原盤をもとに、責任編集した一連の名盤シリーズ中の一枚である。英国で発売されたのは、64年6月のことだったが、第一集にあたる「40年代のジャズ/スイングからバップへ」とともに66年なかごろには、惜しくも廃盤になってしまった。それだけに、東芝が今回このLPの日本発売を試みたのは、まさに本邦コレクターを狂喜させる快挙といっていい。なにしろ、このLPは、SP時代にも発売されなかった本邦初登場の歴史的演奏を多数収録しており、例えばこれによって、当時若干19才のテナー奏者ソニー・ロリンズの実に最初のレコーデッド・ソロを耳にすることができるのである。結論をさきにいうのもおかしいが、少くともジャズ・レコード・コレクターは、いますぐこのアルバムを買っておくべきだ。筆者は、このLPが一人でも多くの愛好家のコレクションのなかに大切に保存されることを願っている。以下、もっと具体的に、全12曲の内容にふれてみよう。
A面最初の2曲はグッドマン・オーケストラとコンボの演奏だ。「アンダーカレント・ブルース」は48年12月の録音で油井正一氏が本誌別冊「モダン・ジャズ百科」中の“モダン・ジャズ秘話”と題する一項で紹介されたバップ・トランペットの名手ダグ・メットームの貴重なしかもブリリアントなソロがフィーチュアーされている。「スティーリン・アップルス」はイギリスでもこのLPで初登場したバップ演奏中もっとも貴重なコレクターズ、アイテム。グッドマンにつづいてワーデル・グレイ、ファッツ・ナヴァロの名演奏がきかれる。
つづく③④とB面⑨⑩は、これも初のLP化で、バップ・スキャットの名手バブス・ゴンサレスが49年1月から4月にかけてキャピトルに録音したバップ・セッションからとられたもの。このうち「キャピトライジング」と「プロフェッサー・バップ」(49年1月20日録音)はソニー・ロリンズ(当時19才)の最初のレコーデディングセッションにあたり、すでにして今日の姿をほうふっとさせるロリンズの興味深い初ソロが収録されている。この2曲では白人アルトの名手アート・ペッパーが“ジョーダン・フォーディン”の変名で加わっているほか、J・Jジョンソン、ベニー・グリーンも参加、ソロをとっている。ペッパーは「プレリュード・トウ・ア・ナイトメア」(49年3月録音)でみごとなソロを吹き、ここでは当時17才のウイントン・ケリーのピアノ・ソロまできける。「セント・ルイス・ブルース」(49年4月録音)は、ロリンズ2度目のレコーディング・セッションで、ここでも彼のソロがフィーチュアーされている(いずれも本邦初登場)。A而⑤とB面⑪は、51年1月録音のメトロノーム・オールスターズによる歴史的演奏で、デヴィス、コニッツ、ゲッツ、シアリング、サージ・シャロフ、ローチといった巨匠が一堂に会してソロを競いあう。就中⑪の「ローカル・802ブルース」でのデヴィスとコニッツのインタープレイが圧巻だ。
A面の「コースト・トウ・コースト」はガレスピーバンドの本領を伝える熱気にあふれたバップ演奏(50年1月録音)。サックス・セクションにコルトレーン(当時23才)、ジミー・ヒース、ポール・ゴンザルヴェスらが加わっているが、ソロはヒースとゴンザルヴェス、ガレスピーの順で出る(全ソロ、ヒースとの説もある)。B面の⑦⑧は、これも歴史的にあまりにも有名なトリスターノ六重奏団の演奏。(49年5月録音)。「インテュイション」ではトリスターノ以下コニッツ、マーシュ、バウアー、フィシュキン、ベストの6人がコードやメロディ、リズムの制約をとりはずし、フリーな即興演奏を試みて今日オーネット・コールマンが実践しているニュー・ジャズに先べんをつけている。「マリオネット」は筆者のアイデアでデヴィス九重奏団の「ダーン・ザット・ドウリーム」(この曲は近く「クールの誕生」に追加されて本邦初登場する)に代って特に加えられたもの。「ザッツライト」はハーマンのセカンド・ハードによる決定的名演奏。ギブス、ゲッツ、チャロフらの超スピードに乗った白熱のソロがきかれる。
TAKESI0506さんからのコメント。
トリスターノがキャピトルに吹き込んだ7曲の演奏は、私の最も好きなジャズレコードのひとつですけど、「サブコンシャス・リー」に比べて、あまり話題にならないのは、曲数が少ないので他の演奏と抱き合わせで発売されることが多かったということもあるでしょうか。
この演奏は68年7月のスイングジャーナル・ゴールドディスクに輝いてますが、ディスクレビューは油井さんが書いてます。もちろん五つ星でした😇
「トリスターノ・セクステット(一曲はカルテット)は歴史的名盤である。SP時代に当時キャピトルの発売元だったキングレコードから出た〈マリオネット〉〈サックス・オブ・ア・カインド〉はぼくの最大の愛聴盤だった。特に前者におけるビリー・バウアーのギターにはぞっこん惚れこんだ。今聴き直してもこれはバウアーの傑作だ。
このうち最も貴重なのは〈イントゥイション〉と〈ディグレッション〉である。これは二曲を録音したあと突然「ハーモニーも何もきめないで、全くフリーにやろう」とレニーがいい出してワン・テークでとったものだそうだ。フリー・ジャズの先駆的な作品である。
バリー・ウラノフの著によると「4曲やったがうち2曲はキャピトルがテープを消した」とある。わざわざ引用するのは「惜しい!」という意味ではない。「テープを使っていたこと」に驚くのである。技術導入の早いNHKですらテープを使ったのは1952年春のことだと記憶する。レギュラー・プロをもっていた河野隆次(りゅうじ)さんが「今度テープ録音というのができて便利になった」ともらしたのが、日航の木星号が三原山に激突した日だったことをおぼえているからだ。プレスティッジ盤「サブコンシャス・リー」は同じ時期の録音だがテープではない。そのせいだろう、これらのセッションはズバ抜けた音だ。リー・コニッツもウォーン・マーシュも上出来である。コニッツはこの神がかった時代を二度と取戻すことができなかった。〈ワウ〉はトリスターノの作だが、テーマの中で凄いダブル・タイムが使われている。トリスターノのソロもダブル・タイムではじまる。これがいつのまにか元のテンポに戻るのだが、その戻り具合の鮮かさを聴きのがしてはならない。他の凡才のやり方とはまるで違うのだ。この7曲は不滅の傑作である。
トリスターノの先進性がよーくわかります。
もし長生きしていたら、きっと打ち込み音楽の鬼になっていたんじゃないかと思うんですよね。
自宅のスタジオで延々と打ち込み作業を続けるマッドサイエンティスト的なトリスターノの姿を思い浮かべるのは容易です。
で、もしかしたら、クラフトワークを凌駕するほどストイックなサウンドメイカーになっていたかも?!
あるいは、もしかしたらアンビエントのほうに流れていき、ブライアン・イーノを凌駕するほどのサウンドデザイナーになっていたかも?!なんてことをよく妄想します。