マイルスはハバードをどう評したか

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ノー・アイデア

TAKESI0506さんからのコメント。
こちら

またまた古い話になりますけど、46年前のスイングジャーナルに児山紀芳さんが来日中のマイルス・デイヴィスにインタビューした記事が載ってます。
その中でマイルスはフレディ・ハバードについて語ってます。

児山 フレディ・ハバードのことを雑誌のインタビューでノー・アイデアだって言ったでしょう?

マイルス あれはフレディを勇気づけるつもりで言ったんだよ。あいつはトランペッターとしていいものを持っているんだ。いい音が出ているし、スピードだってある。トランペットのすべてを知り尽した奴なんだ。ところがプレイを聴いても魅力がない。セックス・アピールを感じさせない美女みたいなもんだ。つまりフレディの場合は、練習のやり過ぎで、アイデアが固定してしまってるんだ。練習をやり過ぎるからフレーズが陳腐になって形にはまったことしか吹けなくなってしまうんだ。

児山 あなたの場合は、練習なんてやらないんですか

マイルス 12才の時から17才の時まではやったけど、そのあとは練習なんてすっかり止めてしまったよ。ステージで吹いているからそんな必要はないんだ。

児山 私が受ける印象では、演奏前のあなたはいつもとても不安というかいらいらしているようだ。

マイルス 演奏会やクラブに出る時の直前は、いつだってナーバスになってるよ。特に大きなコンサートの時なんかは一週間くらい前から自分でもおかしくなってるのが分るよ。だから、友達なんかに、演奏前はおかしくなるよっていうんだが、誰も分ってはくれない。だいたいミュージシャンというのは、演奏にのぞむときの状態としては、リラックスしていればいいってものじゃない。ホットな状態でしかもリラックスしている必要があるんだ。

児山 そんなことって出来ますか?

マイルス とても難しいけど、演奏する前には、そういう精神状態にするんだ。何かを犠牲にしなければならない場合もある。特に女のこととかね。しばらくは、孤独になりきって、音楽のことだけを考えるんだ。どんな風になるだろうかとか、どこでどうするべきだろうかといったことをね。

 フレディ・ハバードの場合、少々優等生すぎて面白味に欠けるということでしょうか。
ケニー・ドーハムなどにも言えることですが、もっと自由奔放な面があってもいいのではないかと感じることはありますね😁

ま、なんというかマイルスらしいお話というか。
このコメントを紹介する動画をアップしました。

コメント

長谷川孝二さんからのコメント。

そのマイルスのハバードに対するコメントは読んだことがあります。
単純にハバードにもマイルスにも苦手な部分があるだけで、帝王(マイルス)が言ったからって鵜呑みにすることでは無いと思っています。
マイルスに限らないけど、こういう同業者に対する辛口意見というのは日本人のサックス奏者同士でも陰口みたいによく聴く話で、僕はこういうことを聞いた時点でそれは苦笑いしながら空返事してスルーします。例え尊敬している奏者が言ったとしても、こういった陰口に関しては心の中で軽蔑します。まあマイルスはインタビューで答えているから陰口ではないけど、僕にとってはその部分は例え帝王でも軽蔑の範囲になります。
僕が座右の銘にするのは【自分がリスペクトしてる人のつまらない部分は見ないふりしない】そして【自分が嫌いな人が言う素敵な言葉も見逃さずに認める】ということです。
マイルスは確かに凄いけど、マイルスには出来ないものをハバードは持っています。
それこそ裁判官はいらないし、往々にして同業者の言うそれは感情が入るのであまりアテにならないと思っています。
ただ【一理はある】くらいに受け取ります。
マイルスがなんと言おうが一理あっても、それでもハバードは素晴らしいラッパ吹きだと僕は思います。
僕はもしかするとハバーディアンなのかもしれません(笑)。

このコメント是非動画で取り上げてください(爆)。

長谷川孝二さんからの追加コメント。

そもそも、マイルスがフレディハバードに対して「練習し過ぎてスタイルが固まる云々」みたいなことを言うなら、マイルスがかわいがっていたコルトレーンはどうなるんだ?ってことを感じるし、このあたりが【どちらも練習の虫なのに、同業者には批判で、自分が大好きな奏者にはそれをしないということが、既に論理が破綻しているし、整合性が無い】ので、やはり感情がすごく入ってると思います。

まあ(例外を除き)ジャズメンは学者ではなくて、良くも悪くもヒューマニストなアーティストだから、こういう話はあまり神の言葉の如く受け取るようなものではないと思います。不思議ちゃんや不思議君が「う〜ん、またなんか言ってるなー」くらいでちょうどいい(笑)。

うん、たしかに私にとってマイルスは不思議ちゃん。
それ以上に、オーネットは、もっと不思議ちゃん(笑)。

Tetsuo Nambaさんからのコメント。

「No idea」のくだりは明らかな誤訳です。普通こういう時は「自分はよく分からない」の意味で使われます。Freddie にアイデアが無いと言った訳ではありません。その意味なら「He lacks ideas.」と表現することことが多いです。
日本の雑誌の記事は誤訳が多いので、僕はいつも原典にあたるようにしています。

なるほど。
「よくわからない」と「アイデアが枯渇している」では、ぜんぜん違いますね。

Jさんからのコメント。

インタビューの全体よく見返し 訳文上でも意味の違い ほとんど ないように思います    ノー アイディア に 敬意を払い
時代の人には ほとんどこのような記事は みな知ってますが 少しずれるだけで 誰も知らないものになっていくんですね~
活字に あまり興味なく     全ては 音楽自体が語ってくれています         会話は 別ですよ (笑)

ところで、全然違う話ですが、
「ノー・アイディア」というと、私はいつもミシャ・メンゲルベルクを思い出します。

怖いんですよ、ジャケットの演奏している顔が。

真剣そのもの、鬼気迫るものがある。

中身はカッコいいフリーなピアノです。

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iwao masaさんからのコメント

マイルスの言動は額面通りには受け取らないのが正解だろう。

例えば、O. コールマンをクソミソに言ったと巷間されているが、実は「嫉妬とリスペクト」の混在した発言なのは後年明らかになっている。コールマン自身も敬意を抱き、マイルスのライヴに足を運んでいる。

フレディについては「リーダーの資質」に能力が発揮されないタイプと言える。私の少なくないコレクションで彼のリーダー作はパッと思い出せないから一枚もないかもしれない。色気がリーダーシップを取るに至っていないと言える。

私も、リーダー作よりも、サイドマン参加作品のほうがパッと思いつきますね。

R Kさんからのコメント。

いかにもマイルスらしいですね。

自分とは少々行き方の違う若手のミュージシャンにエールを贈る様な気持ちで言ったのが、見識の浅いメディアに〝誤解〟をされて伝わってしまったという事ですかね。

〝( I have ) no idea.〟と言ったのはマイルス自身にとって〝よくわからない〟やり方をしているフレディーに対する率直な感想ではないかと思います。

楽器の練習とアイデアを練る事のバランスについて、マイルスは話していますが、ある意味禅問答の様ですが一級のアーティストの方々にとっては日常的に行っている非常に大事な部分なのでしょうね。

それはまた、ミュージシャン個々で違いがあってもおかしくない事なのでしょうね。それも含めて自分で納得する、また外部の評価を受けるという事でしょうか。

ジェネラリストとスペシャリストの違いのような気がしますね。

技術者(スペシャリスト)としての腕は一級品だとしても、
ジェネラリスト(全体を見渡す存在)的な資質のほうが強いマイルスからしてみれば、
その超一級な専門技術に「色気」を加えろ(切り口やアンサンブルにアイディアや工夫を盛り込め)、ということなんでしょうね。

再びJさんからのコメント。

まあまあ リーモーガンみたいなひとがいるおかげで 練習せざるを えなかったんでしょうね~      マイルスは いくら練習してもおっつかね~ や   と 悟っていたんでしょうね~(笑)
                    J

このマイルスの「うまい人ショック」は、
きっと、パーカー、ガレスピーの時からあるもので、
だからこそ、「技術的卓越者(スペシャリスト)」であるよりも、
「企画発案&統合者(ジェネラリスト)」であらねばならない意識がより強くマイルスの意識に根付いたのでしょうね。

だから、どちらかというと「スペシャリスト寄り」のフレディは、
「ジェネラリスト寄り」の資質があまり発芽しなかったのかもしれません。

それを裏付けるのが、iwao masaさんからのコメント。

マイルスの言動は額面通りには受け取らないのが正解だろう。例えば、O. コールマンをクソミソに言ったと巷間されているが、実は「嫉妬とリスペクト」の混在した発言なのは後年明らかになっている。コールマン自身も敬意を抱き、マイルスのライヴに足を運んでいる。

フレディについては「リーダーの資質」に能力が発揮されないタイプと言える。私の少なくないコレクションで彼のリーダー作はパッと思い出せないから一枚もないかもしれない。色気がリーダーシップを取るに至っていないと言える。

ちなみに、私としては、
ブルーノートの『ブルー・スピリッツ』なんか、
けっこう意欲作に感じるのですが、
マイルスからしてみるとヌルい??

単に人数多くした厚化粧みたいな感じに言われてしまうのかなぁ。

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高松貞治さんからのコメント。

私も古い話になりますが、20年以上前の確かスイングジャーナルで、マイルス・デイヴィスが日本のミュージシャンを、昔は俺たち黒人もいろいろ集まって、つるんで、音楽を白人たちに対抗したもんだが、今は日本人が昔の黒人ようにいろいろ集まって対抗していると、生前のマイルス・デイヴィスは日本人のミュージシャンを褒めていました。実際いろいろな日本人ジャズミュージシャン、狭間美帆などが世界のジャズの最前線で活躍しています。マイルス・デイヴィスの予言が的中しました!

そのインタビュー記事読んでみたいなぁ。
もうないですよね……。

伊勢大神楽の真実さんからのコメント。

素晴らしい!
やさしい解釈の下
分かり易い
ご説明です

いつも、同感させられます
ありがとう!

こちらこそありがとうございます!

人力飛行機さんからのコメント!

Freddie Hubbardてよく知らなかったんですが、YouTubeで演奏シーン視ると。日本の日野皓正の吹き方に酷似してるんですね。構え方とか力み方とか、目をつむって力を込めて上半身を左右に振りながら吹くとこ。あと音質も似てる。フレージングも日野皓正を彷彿とさせる。ひとしきり吹いた後で“一仕事終わり!”て感じで脱力するところもそっくり。どっかスポーツみたいにやってる。日野さんもスポーティだから演奏シーンが。視てて日野さんてマイルスじゃなくってFreddie Hubbardが手本だったんだろう。Freddie Hubbardとマイルスと比べると。マイルスがメンバー(ハービー・ハンコックだったか?)に「弾きすぎるな」て言ってた、と読んだことがある。で、実際聴いてると自分でもそれを課している。本当に出したいフレーズしか出さない。に比べると、他のペット奏者はほとんどどっか際限なく吹いてる感がある。あれがでもジャズ・トランペットとしては“ぽい”わけでしょう。そこが最も違うと思いますね。動画をずっとみてると「Freddie Hubbardが吹いてるとMiles Davisと間違える」て談話が出てきたのがあったけど、全然違うと思いますけどね。間違えることはない。Freddie Hubbardと日野皓正はでも間違えるかもしれない(笑)「フレディはno ideaだ」というのは、ジャズの演奏って体力がないとできないというか、とくにFreddie Hubbardみたいなトランペット演奏は。体力じゃなくidea重視がマイルス。新しい構築とか方程式。菊池さんが解説してるような。それがわかりましたね。

言われてみれば、たしかに吹き方似てますね。
身をよじりながら全身のエネルギーを唇に集中させているようなところが。
あと、音の勢いなんかも両者共通したものがあるように感じます。
ご指摘いただくまで、まったく気が付きませんでした。

Mikio Itoさんからのコメント。

ジャズトランペットをやっている私からすると,トランペッターとしてのアイドルは圧倒的にフレディ・ハバードですね.ミュージシャンとしてはマイルスをフレディと比較にならないほど尊敬していてもです.とにかく奏者として見事なオールラウンダーで,ソロの引き出しも見事に整理されているイメージです.
コンボやレコーディングのメンバーとしては最強と思います.ただ,ハービー・ハンコックの自伝の中で,VSOPのメンバーとして彼をクビにした理由が書いてありましたが,音楽以外は相当いい加減な人だったようで...