1974年8月号の『スイングジャーナル』に掲載された『フェン・ファーマー・メット・グライス』評。
タイトルは、「ファーマーがグライスに出会うとき」に引っ掛けて、「あなたがジャズに出会うとき」。
この記事は、若かりし日の中山康樹氏が執筆されています。
『スイングジャーナル』の編集長どころか、まだ『スイングジャーナル』編集部に就職する前。まだ大阪にお住まいだった頃の中山氏の執筆記事なんだよね。
かなり若い頃の記事だと思われ、後年の『マイルスを聴け!』の文体とはかなり違う文体を楽しめます。
しかも、あの「(日本一の)マイルス者」だった中山氏が、マイルスじゃないトランぺッター、アート・ファーマーのアルバムを取り上げているとは、ちょっと驚き。
しかも、この「地味名盤」、私けっこう好きなんだよね。
なので、動画で紹介してみました。
コメント
TAKESI0506さんからのコメント。
私からの文章を取り上げていただきありがとうございます。これは中山康樹さんの最も初期の文章ということで、貴重だと思いました。
このレコードはスイングジャーナル選定ゴールドディスクとして発売されて、次号の9月号では岩浪洋三さんがディスクレビューを書いてます。評点はもちろん5星でした😉次に続く
『去る7月ニューヨークのハーフ・ノートにはからずもこのレコードで仲良く共演しているアート・ファーマーとホレス・シルヴァーがそれぞれ自分のグループをひきいて同時に出演していた。2人は仲良く歓談する風でもなく、ただお互いに黙々と演奏していたが、50年代のプレイにくらべ2人ともいささか生気に乏しくなっているのが、きいていて淋しくなるとともに、いや応なく時代の推移を知らされるのであった。50年代の彼らはなんと希望と生気にみちあふれていたことであろう。自分達の手で日々ジャズが作られていくという実感がプレイを生々としたものにしていたのであろうか。
いまこの20年前の1954年5月に録音されたアルバムを久しぶりにきき返しながらジャズのこわさをしみじみと味わっているところである。ジャズは積み重ねが通用しない世界である。このアルバムから20年経ったからといって、ここで演奏している人達のプレイがそれだけよくなったかといえば、けっしてそうはいえないのである。クラシックの場合は技術の積み重ねができる場合もあるが、ジャズは即興演奏だし、その瞬間、その瞬間が勝負である。過去の名声も過去の実績も通用しないところがジャズの魅力でもありこわさでもある。じっさい、ファーマーにしても、シルヴァーにしても、現在のプレイよりこの19年前の演奏の方が人の心を動かすのだ。
さて、このアルバムはA面とB面で少しメンバーが違い吹込みも54年(A面)、55年(B面)に分かれているが、タイトルどおりファーマーとグライスのコラボレーションという点で統一されたレコードだ。いわゆるハード・バップ初期の吹き込みに当るものだが、曲はすべてジジ・グライスのオリジナルで、グライスはこの当時すでに十分ハード・バップ・コンセプションをこなしていたことがわかるのである。グライスはクリフォード・ブラウンにも作曲やプレイの上で影響を与えた才人で、アルト・サックス奏者としてすぐれていただけでなく、作編曲者としてすぐれており、その知的で趣味のよい仕事ぶりは、高く評価しなければならない。57年にはドナルド・バードと有名なジャズ・ラブを結成するのだが、これはそれに通ずる道を示唆した作品でもあって興味ぶかい。したがってジャム風のハード・バップとは違い整然としたテーマの合奏や編曲面にきくべきところが多い。したがって、このレコードの中心人物はファーマーよりもグライスとみるべきだが、しかし、彼のコンセプションを理想的に表現する面でアート・ファーマーを必要としたこともまた確かである。ここには当時のイースト・コーストのジャズメンが集まっていて、A面にはMJQからパーシー・ヒースとケニー・クラークが、そしてピアノにはファンキーなホレス・シルヴァーが加わっており、B面にはユニークなピアニスト、フレディ・レッド、それにアートの双児の兄弟アディソン・ファーマー、そしてアート・テイラーと、当時生々としたプレイを行っていた人たちが集められており、50年代中期のニューヨーク・ジャズ・シーンの一端をのぞくことも可能である。
ジジ・グライスの作、編曲はいずれもアドリブを生かすことを考慮に入れたもので、どの曲も趣味よく書かれているが、とくに〈ア・ナイト・アット・トニーズ〉はグルーヴィでヴァイタリティにあふれた快作だし、〈ブルーコンセプト〉は2人のテーマに用いられていた曲である。〈デルティトニュ〉はグライスがパリでクリフォード・ブラウンとのセッションのために書いた曲でヴォーグにも録音がある。〈ソシアル・コール〉はジジ・グライスの代表作のひとつであり、たしかサヴォイにも吹き込みがあり、アーネスティン・アンダーソンなども歌っていたが、美しい印象的な曲だ。
演奏の内容についてはホレスが加わっている分だけA面の方がすぐれているが、54~55年にこれだけしっかりした作品を作ったグライス=ファーマーの力量には改めて感心する。この頃のプレスティッジはジャケット・デザインも抜群だった』中山康樹さんの記事は、大船駅前のコンビニでプリントしましたけど、プリンターを持ってなくても、USBメモリから気軽にプリントできる時代になったとは、昔とは隔世の感がありますね😁
kamaichi2002さん⇒TAKESI0506さん
大船駅前! おお、あの日ですね。
TAKESI0506さん⇒kamaichi2002さん
はい、ファミリーマートです😉
あの日は翌日にかけて大船、茅ヶ崎、辻堂と未知の駅で降りましたが、どの駅も立派で賑やかなのには驚きました。
またお会いできる日を楽しみにしております😇
まさか、あの台風の日に、わざわざアート・ファーマーの記事を!
ありがとうございます。
そういえば本日も台風の日(笑)。
もう行っちゃったけど。
博 橋本さん⇒TAKESI0506さん
家事都合により思う様なお持て成しはできませんが、またお会いできそうな時はお声をかけて下さい😊
そのうち喜んでいただけそうな物を見つけて、また送ります、では!😊
TAKESI0506さん⇒ 博 橋本さん
ありがとうございます。少し遠距離になりますので、頻繁に訪問することはむずかしいですが、またお会いできる日を楽しみにししております😇
K N さんからのコメント。
ありがとうございます。これ私の愛聴版で、離島に持って行く候補10にも残った程です。メンバーのプレイはもちろんのこと曲が良いですね。とりわけStupendous Leeが好きで未だに何気なく口ずさむことがあります。ジジグライスは律儀で控えめな印象を与えますが、バップのラインをメロディアスに歌える隠れたアルトの名手と思います。加えてこれだけの作編曲能力があるのでタッドダメロン同様、もっと評価されてもよかったのにと残念です。また、ファーマーを語る時枕詞のように「リリカル」と言う形容詞がついて回りますが、このアルバムは、彼が本当はメデイアムからアップテンポを得意とする熱いバッパーだと言うことを思い出させてくれます。高野さん改めて感謝です。
Kazuya Tanabuさんからのコメント。
あまり他のジャズマンはとりあげてないようですが、Blue Lights大好きです! 初めて聴いたのは、『Blowing in from Chicago』のバージョンでしたが、作曲者が演奏しているのも当然いいですね。