追悼:アストラッド・ジルベルト/ミンガスのポークパイ・ハット、里国隆と戦前ブルースなど

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先日アップした動画「《フォーバス知事の寓話》をジャズ評論家たちはどう評したか」(こちら)に視聴者の皆さまよりいただいたコメントに対してのアンサー動画をアップしました。

アストラッド・ジルベルトさんのご冥福をお祈りいたします。

もっとも、この動画で語っている前半の箇所は里国隆だったりするのですが……。

コメント

TAKESI0506さんからのコメント。

アストラッド・ジルベルトと言えば、またまた中村とうようさんの話になりますが😀、とうようさんの硬派のイメージからして、アストラッド・ジルベルトなど鼻にもひっかけないのではないかと思われますが、65年のスイングジャーナル「話題のシンガー」という文章の中で絶賛しています。

『アストラッドの歌を聞いて、随分風変りな歌手だなアと思われた方は多いに違いない。うまいのか下手なのか、大人っぽいのか子供っぽいのかわからない、カマトト的、小妖精的な感覚をもった歌い方である。顔を見ても一見少女的だがすでに25歳である。ビブラートもつけず、ピアノ・フォルテもつけず、ちょっとハスキーな軽い声でスーッと平ったく歌うような歌い方だが、ジャズ・ヴォーカリストにかつてこのようなタイプの歌手がでただろうか。チェット・ベイカー、ブロッサム・ディアリーというような人の名を思い浮かべたとしても、アストラッドとはどこか違う。アストラッドの個性はそういったジャズ・シンガーたちと比べてみても分析できないのである。むしろそれを彼女の個性ではなくてボサ・ノヴァの特徴として把握したほうが問題がはっきりしてくる。ボサ・ノヴァ歌手のヴォーカル・スタイルというものは、アストラッド・ジョアン・ジルベルト、カルロス・リラなどに共通してみられるひとつの特徴がある。それは極めてストレートで平担で軽いということ、つまりクールな感覚なのである。これは、ボサ・ノヴァ・ヴォーカルのスタイルが、スタン・ゲッツのテナーやジェリー・マリガンのバリトンなどのクールな味を歌にとり入れることによって作り出されたという経緯を考えれば、当然すぎるほど当然なことだ。つまり、アストラッド・ジルベルトの歌は、どんなジャズ・シンガーよりもむしろスタン・ゲッツのテナーに似ているのである。ゲッツ=ジルベルトが名コンビであることはけっして偶然ではない。
 ボサ・ノヴァの音楽観は、オーヴァーな感情表現、ドラマティックな盛りあがり、甘い官能性というような武器を使って感覚に訴えることを排するものである。代りに、歌詞、メロディー、ハーモニー、リズム、音色、テンポ、強弱、そういったあらゆる要素が穏やかにバランスしながら、知性に訴える内面的音楽表現をくりひろげるのがボサ・ノヴァの行き方である。歌手にもそういった高い知性的表現力が要求される。しかしその声は人間の最も自然な声、つまり日常会話の発声に近いものでなくてはならない。
 ちょっと聞くと女学生の鼻歌みたいに聞こえるかもしれないアストラッドの歌は、実はこのような難しい要求を満たす、非常に高度な歌の世界なのである。ボサ・ノヴァの旋律はかなり歌いづらいものが多く、ことにジョビンの作品は、かなり音程の取りにくいメロディーが少なくない。それを軽々と歌いこなしているアストラッドは、家庭の主婦から突如転向した人にしては、あまりにも恵まれた素質の持ち主といえるのではあるまいか。
 今日、デラ・リース、ダコタ・ステイトンといった極めてアクの強い黒人ヴォーカリストがいる一方、それと正反対の極点に立っているようなアストラッド・ジルベルトの活躍は、ジャズ・ヴォーカル・シーンを非常に面白くしている貴重な存在であるに違いない』

まったくもっておっしゃるとおりだと思います!

ルイ・カストロ・著、国安真奈・翻訳の『ボサノヴァの歴史』、というより、「アントニオ・カルロス・ジョビンの歴史」が中心に綴られた本を読めばわかるので詳細は省きますが、中村とうよう氏の分析は、まさにボサノヴァという音楽、ボサノヴァに携わるミュージシャンたちの表現が目指さんとするところを的確にとらえていると感じます。

それにしても、声の「つかみ力」とでもいうのでしょうか、やっぱりアストラッドは他のボサノバ系歌手と比較しても群を抜いた天賦の才のようなものがあるように感じます。

いわゆる「華」のようなもの?

単にボサノヴァのコンセプトを体現しているだけではない、なにか人の耳を惹き付けてやまない、いわゆる「フェロモン」のようなものがあるのでしょうね、きっと。

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R Kさんからのコメント。

お疲れ様です。
そうですか。アストラッド・ジルベルトが亡くなられましたか。唯一無二の才能が、またひとつ消えていってしまいましたね。どうぞ安らかに。

82年当時、日本のジャズトロンボーンの〝顔〟として若くしてすでに活躍されていたのが向井滋春さんですが、アストラッド・ジルベルトとの共演アルバムを出しておられます。フュージョンがトレンドの時流に合わせたアルバムでしたが、一見クールでつかみどころがなさそうなジルベルトの歌声に、エモーショナルで歌心に富んだ向井さんのフレーズが溶け合い、とても聴き心地の良いアルバムでした。〝SO & SO〟というアルバム名でした。友人から借りたアルバムだったのですが、まだ持っているかどうか今度聞いてみようと思います。

アストラッド・ジルベルトの歌声は、日本で発表になった時に、たしかに好評な意見だけではなかった様ですね。中でもジャンル違いのある評論家は〝素人だ〟と酷評する人もいた様です。

私は彼女のアルバムを何枚か聴き込んでいくうちに、一見さりげなく聴こえる彼女の歌声の、透き通った雑味のないところや、非常に正確な音程、タイム感覚など、引き込まれていきました。まさに〝ボサノバの女王〟でしたね。

時の流れなのだと思いたいのですが、それにしても彼女の歌声は名残惜しいです。

先ほどAmazonで調べてみたら、『SO&SO』というタイトルのアルバムなんですね。

なかなか、爽やかなデザインのジャケットでした。
ただ、品切れで入荷見込み無しとのこと。
残念!

まさにまさに仰るとおりだと思います。
>一見さりげなく聴こえる彼女の歌声の、透き通った雑味のないところや、非常に正確な音程、タイム感覚など……。

うーむ、信じられん!
>ジャンル違いのある評論家は〝素人だ〟と酷評する人もいた様です。

Kawai Andyさんからのコメント。

ここ最近の彼女についての情報は全く知らなかったのですが、一番よく聴いたものはやはり多くの人と同じく、60年代のヴァーヴ時代のものですね。
私にとってはアストラッド・ジルベルトは安らぎを与えてくれるミュージシャンの一人でした。
愛らしさの中に素朴さとモダンな感覚が同居しながらもナイーヴで、しかも親しみやすさがあり、他に代え難い魅力でした。
オルガニストのワルター・ワンダレイ名義の『A Certain Smile, A Certain Sadness』はポップで楽しいしギル・エヴァンスのアレンジでの『Look To The Rainbow』なども可憐で大好きなアルバムですね。
余談ですがジャンルも国も違いますがフランソワーズ・アルディに近いものを感じるのはこの頃の時代のせいでしょうか?
ありがとうございました、どうぞ安らかにと言いたいです。

>愛らしさの中に素朴さとモダンな感覚が同居しながらもナイーヴで、しかも親しみやすさがあり……

う~む、まったくもってその通り!ですね。
時代、流行に関係なく、心地よい気分にさせてくれる素晴らしい歌姫だと思ってます。

博 橋本さんからのコメント。

ボサノヴァと聞けば、常に一緒に思い浮ぶアストラッド・ジルベルトの声とたたずまい。
合掌。

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