大橋巨泉のサキソフォン・コロッサス評〜1960年の『スイングジャーナル』より

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動画「【雑誌読み】21歳学生の「ロリンズ愛」〜1976年『Jazz Land』1月号・読者投稿をご紹介」(こちら)に視聴者さまよりいただいたコメントを紹介した動画をアップしました。

コメント

御駄賃取郎さんからのコメント。

ご採用ありがとうございました。投稿させていただいた中の「私の唯一経験した、ジャズ喫茶でのレコードへのスタンディング・オベイション!」という実に稀有な体験について、少し記憶をたぐりながら思い出してみます。

場所は東急東横線・新丸子の駅前の今はなき某ジャズ喫茶でした。すぐ駅前にありましたが、割と営業期間は短かったようなので、店名が思い出せませんのでご容赦ください。

ビリー・ハーパーのコロムビア盤の「ソーラン・ブシBH」は当時のSJ誌の合議制ディスクレビュー(たしか評論家数名による投票制で満点獲得)のレコードでした。

当時横浜での仕事があり、その帰り道、この店にふらりとたちよりました。店内にはまだ早い時間にも関わらず4,5人の客がいました。

そしてハーパーの「ラバー・フッド」(ソーラン節BH)の1曲目の「キャルバリー」がおわると、「ウォー!」と学生風の3人が「「すげえ!」といいながら立ちあがって「スタンディングオベーション」をはじめたのです。そして私もつられてスタンディング・オベーション!となりました。それくらい、強烈なインパクトがありました。

「キャルバリー」はわりと有名なゴスペルのようですが、クラシックでも当時、ジェシー・ノーマンとキャサリン・バトルの共演ライブ盤(グラモフォン)がありましたね。とても荘厳な曲でビリー・ハーパーはその少し前にマックス・ローチのピアノレス・カルテットの公演にも参加してこの曲をとりあげていましたが、「キャルバリー」は、2ドラムスによるまさに「火を吹く!ごとき!!」熱演で、レビュー総合点1位も十分納得できました。

当時ハーパーは「コルトレーンのテクニックをすべてマスターしている」といわれていましたが、私はなによりも「冒頭から全開でぶっ飛ばす!」ビリーにぞっこんでした。。

ふりかえればあの日の客は慶大の日吉キャンパスに通う学生仲間のようでしたが、なんだかとても感動しました。

そしてこんなご機嫌なレコードが日本企画で老舗・コロムビアから政制作・発売されたことに、「今は昔・・」と思いつつも「名門レーベルの底力」を実感したものでした。

御駄賃取郎さん、またまた興味深いエピソードを教えていただき、ありがとうございます。
ジャズ喫茶での「スタンディング・オベーション」という稀有な体験、そしてその中心にあったビリー・ハーパーの『ソーラン・ブシBH』。うーむ、なんとも奇妙な(?)、いや失礼、レアなご体験をなされたようで。

ジャズ喫茶という「特殊異次元空間」ならではの出来事、なんでしょうかね。
場所、というかシチューションって大事ですからね。
新丸子駅前のジャズ喫茶という舞台設定からして、すでに何だか心くすぐられるアンダーワールドゾーン(?)。駅前の喧騒を抜け、扉を開けた瞬間に漂うジャズの香り、店内の空気感、そして爆な音響でレコードが流れるその独特の雰囲気――。もちろん想像ではあるのですが、現在ではなかなか体験できなくなった、当時の空気の一端を感じることができました。

特に、店内にいた学生風の3人が「ウォー!」と声を上げて立ち上がった瞬間を想像すると、まさにその場がジャズ愛による一体感で包まれていたことが伝わってきますね。ジャズが持つ「人を衝動的に動かすエネルギー」を極端に象徴するようなエピソードですね。

『ソーラン・ブシBH』、そして「キャルバリー」。これらの楽曲が放つ圧倒的なエネルギーが、どれほど聴く者の心を揺さぶったのか――御駄賃取郎さんのコメントから、そのインパクトが手に取るようにわかります。特に「火を吹くような熱演」という表現が何だか伝わってきますよ(聴いたことないんで想像ですが)。2ドラムスが繰り広げるエモーショナルな演奏は、まさにジャズ好きの体内にある「ジャズ核」に直接訴えかけるものだったのでしょうね。

また、「コルトレーンのテクニックをすべてマスターしている」と評されたビリー・ハーパーですが、御駄賃取郎さんがおっしゃる通り、彼の魅力は「冒頭から全開でぶっ飛ばす!」その姿勢にこそあるのだと思います。
ただ、個人的にはハーパーのテクニック面に関しては「全てをマスター」かなぁ?なんて思っちゃったりもしますが、逆に技術で追いつけない部分を気合いとド根性でカバーしているサックス吹きという認識ですね、私の場合は。だからこそ、ハーパーの演奏には、技術を超えた魂の叫びがあり、その叫びが聴く人を感動させるのかもしれません。
そういえば、元・ジャズ批評編集長の原田氏が何かのレビューで、ハーパーのことを「そんじょそこらのフニャチンサックスとは違うのだ」というようなことを書かれていたことを思い出しましたw

コロムビアから、こんなユニークなレコードが制作・発売されていたとは良き時代だったんでしょうね。ビリー・ハーパーのような熱いアーティストのアルバムを、国内企画で世に送り出せた時代。まだ、ジャズの色々な企画が通っていたんでしょうね。「こういうことやりたいんですが」⇒「おお、面白そうだ、やってみろ」みたいな。

銀座のデクスターコンサートの会場で訳知りニワカ評論家気取り客への「オナラぶっかけ(しかも臭いw)エピソード」といい、御駄賃さんは面白ジャズエピソードをいっぱいお持ちですね。まだまだありそうな感じがします。
思い出したら、また教えてくださいね。

しまさんからのコメント。

ロリンズよりコルトレーンを聴く派ですが巨泉さんのローリンズ愛を知り…サキコロ、この夏中に聞いてみます

しまさんからのコメント。

サキコロ聞いてます、巨泉さんがロリンズ好きなのわかる気がします

しまさん、『サキソフォン・コロッサス』どうですか?
私は大好きなアルバムですが、気に入ってもらえたでしょうか?
というか、すでに気にいられていそうなので、嬉しいです。

このアルバムは、ジャズの金字塔として語り継がれる作品でありながら、どこか人間的な温かさがあるところがロリンズの魅力ですよね。

巨泉さんがロリンズ好きなのもよくわかる――というお言葉、私も完全に同意です。

しまさんがもともとコルトレーン派とのこと。
もちろん私もコルトレーンの深遠さや、日本人の琴線(?)をくすぐる、熱血・真面目・ど根性・ひたむき・努力・ストイック(なイメージ)が好きですし、鬱陶しいほどの熱量とバイタリティに「すげぇ!」と聴くたびにいつも思ってしまいます。

しかし、ロリンズを聴くと、コルトレーンとは違う「地に足がついた」感覚や、音楽を純粋に楽しむ姿勢に心がほぐれる瞬間がたくさんあります。コルトレーンが「問い」を投げかけてくるのに対し、ロリンズは「答え」を見つけた上で、それを面白おかしく語ってくれるようなイメージがありますよね。

ぜひまた感想を教えていただけると嬉しいです。

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