マイルスに「呼ばれた」日本人女性~京都「しあんくれーる」のママ

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『ジャズ批評』パーカー&ビバップ特集号。

この号に掲載されていた記事、京都の「しあんくれーる」のママの記事が興味深い。

なんとマイルスに呼ばれて、ニューヨークの自宅に招待されたとのこと。
マイルスに気に入られた女性。
ニューヨークのマイルスの自宅に訪問し……

マイルスのプライベートな一面をレポートしている興味深い記事の内容を紹介した動画をアップしました。

コメント

TAKESI0506さんからのコメント。

「ADLIB」創刊号のマイルス特集の、鍵谷、植草、油井、中村とうよう、星野ママの対談は何度か書き込んだことがありますが、星野ママがマイルスに関して話しています。

鍵谷 4人がおもいおもいにしゃべってるけど、星野さんは、マイルスとオフ・ステージで個人的な時間を持たれたということで、わたしたちの全然知らないインサイド・ストーリー、トルー・ストーリーといったものをお聞かせ願いたいんですが。
星野 こういう席へ呼んでいただいたこと自体私にとってたいへんおこがましいことだと思いますが、さきほど中村先生がおっしゃいましたように、マイルスの生活そのものからして試行錯誤の連続だと思いますの。私なんか全然とるに足らない人間ですが、彼のそういう生き方、まずそれに私一番感動いたしました。
鍵谷 あなたの持っておられるサングラス、マイルスのに似てますね。
星野 ええ彼からもらったんです。
鍵谷 ぼくら見るとマイルスというのは横暴な人という気がするけど……。
星野 決してそんなことございませんわ。9年前にお会いしたのをよく覚えていらっしゃって、京都ホテルのロビーでお目にかかったとき店はうまくいってるか?。などといろいろ心配していただきました。彼は例の事故で足を痛めてましたので、京都でもプロモーターの方がお医者さまを一生懸命さがしていらっしゃいまして、私は地元なものですから、有名な外科医の先生をご紹介したりいたしました。そういったことで彼の日常も見ることがあったわけですが、すばらしくやさしくて、相手の立場を考えて、立てようとしてくださるってところがありましたね。
鍵谷 アメリカの雑誌などでもマイルスは傲慢で、子供っぽくて独占欲旺盛などといわれてますが……。
星野 確かに9年前にお会いしたとき第一印象は傲慢な方だと思いました。でもこんどお会いしてすごく思いやりがあってすてきな方だと……。金沢の公演のときご一緒したんですが、駅のホームで中年の女の人が重い荷物を持って歩いてるんですね。そしたらマイルスは気軽に手を差し伸べて彼女の荷物を持ってあげるんです。彼にはそんなところがあるんですね。
鍵谷 ショッピングなどにもご一緒なさったときいていますが……。
星野 ええ。マイルスはファッションにはたいへん興味があるらしくて、いろんなお店に案内しますと、とっても楽しそうにね……。それからやはり彼は楽器にもたいへん強くひかれるようで、楽器屋さんでいろんなもの、特に打楽器類なんですが。手にとっでこれはいいよ。なんてね。それでそのとき結局小さな竪琴というか、インディアン・ハープみたいなのを買って行ったんですよ。
鍵谷 マイルスの食事の好みなんかはどうなんでしょう。
星野 そうですね。お店の前にサンプルが出ていますでしょ。あれをのぞきこんでとっても無邪気とでもいうんでしょうか、すごく面白がってあれがいい、これがいいってね。そのときはおそばなんか珍しいのでしょうか、みんなで食べまして。それでマイルスはベースのマイケル・ヘンダーソンの皿におそばを取りわけてやったりするところなんか、サイドメンをだいじにしているって気がいたしました。京都では天ぷらをごちそうしたんですがこれはたいへんお気に召したようで舌づつみを打っていらっしゃいました。彼はお肉は全然食べなくて、お酒もビールだけ。
鍵谷 役者が日常であったら平凡な人間だが舞台に上ったらとたんに大きくみえたりなんかすることがありますね。そういうところがあるわけですね。
星野 日常か平凡だということはございませんわ。確かに舞台では独裁者的な感じといいますかまるで王様のようだと私は思ったんですが、私はそれでいいんじゃないかと思うんです。彼はナイーブでデリケートでそしてチャーミングなんです。ひとことで言い表わせない複雑な両面性を兼ねそなえた人なんです。さみしさ、孤独さ、ヤンチャぼうやみたいなところ、非常に素直だということ、びっくりしましたわ。
鍵谷 東京のニュー・オータニの部屋にいるときに、朝までリズム・マシーンで遊んでるというんです。そういうふうにステージ、オフ・ステージを問わず、周りにはいつも音楽があるんですね。
星野 それは確かにそうです。その日のコンサートのテープが届くのをだだっ子のように待ちかねて、それが届いたらすぐカセットヘセットしてヘッド・ホンで長い間聴いてるんです。私も聞かせていただきましたけど……。とにかく四六時中音楽、音楽ですよ。彼も言っていましたけど〝私のこの世で一番の恋人はミュージックだ”ってね。私、もっともだと思いますわ。
鍵谷 ところで星野さん、最近のジャズ喫茶でお客さんのマイルスの好みというのはどういった具合なんですか。
星野 最近のマイルスのレコード全部非常に長うございますでしょ。私どものほうの商売としては一度に全部というのは無理なんです。たいがいA面の1曲だけということになりますでしょ。何だか私、あとに行くほどよくなっていく、ような気がしますの。お客さまはいいところを聴かないで、知らずに1面だけでこんなもんだろうなんて。それが残念でなりませんわ。私がいる限りは全部かけることにしています。「マイルス・デイビス・イン・コンサート」なんかのリクエストがあったときは私が見ております限り、かならず2枚かけます。
油井 リクエストの種類はどうですか。たとえばCBSの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」とか、プレスティッジのジョン・コルトレーンがいたころのリクエストはどうなんでしょう。
星野 やはり新しい「オン・ザ・コーナー」とか、「ジャック・ジョンソン」「ライブ=イヴィル」など最近のものが少しずつですが多くなってまいりました。
鍵谷 東京はマイルスのレコードがかかる機会っていうのが少なくなっているような気がします。ぼくはときどきレコード・コンサートをやってるんですが、マイルスをやったときは、途中から帰る人がいたりするんでガッカリすることがある。
星野 私のほうではマイルスを2枚、3枚とかけますとお客さんがだんだんのって来て、次からそればっかり聴きにくる人がいます。だから食わずぎらいというか、聴かずに知らない人が多いんですね。私なんかも昔のほうがよかったと思ってた一人ですから。知らなかったんですよ。最後まで聴き通す時間がなくて。
鍵谷 それじゃ一回ぼくが京都に行って「しあんくれーる」でやらせていただこうかな。マイルスを5時間ぐらい。東京ではそれがだめなんですよ。2時間ぐらいやったらもう……
星野 いいじゃないですか。お客さんが一人もいなくなっちゃったって(笑)。
植草 自分のレコード聞いたとき何が好きだみたいなこと言いませんでしたか。
星野 「ジャック・ジョンソン」と「マイルス・デイビス・イン・コンサート」をかけましたときには、「ジャック・ジョンソン」がいいっていってました。新しいお店では「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」あたりしかなかったもんですから、彼はこれはあんまり聴きたくない。早く新しいのを買うようにって言うんです。
鍵谷 それはそうでしょうね、詩人でも小説作家でも30年ぐらい前のをすばらしかったですねえなんていわれると、とたんにきげんが悪くなるからね。

73年のスイングジャーナルには、来日時にしあんくれーるを訪問したマイルスの様子を星野ママがリポートしてます。

●マイルス、しあんくれーるを訪問!
強烈なリズム、鮮やかなワーワー・トランペット、華麗なコスチューム……とにかく驚嘆のステージを展開してファンを圧倒しつくしたマイルス・デイビス。そのマイルスもオフ・ステージではホテルの自室に閉じこもりがちで、日本のファンとの交歓はほとんど無理と思われていたが、去る6月25日京都でのコンサートの折、同地の老舗ジャズ喫茶「しあんくれーる」にひょっこり顔を出し、居合わせたファンをびっくりさせたという。その時のリポートが寄せられたので紹介します。

「6月25日の京都会館でのコンサートが終わっても外出もせずホテルで過していたマイルスが、26日の夜7時頃、折からのドシャブリの雨の中を一行を伴ない、ハイヤー3台を連ねて〝しあんくれーる〟へ来店しました。マイルスがここを訪れるのは2度目ですが、9年前のその折のことをよく記憶していて懐しがっていました。マイルスは3時間近くもレコードを聴きながら、時にはフォークで皿を叩いてリズムをとったりで終始ゴキゲンでした。また、あのサイン嫌いで有名な彼が、居合わせた多勢のお客さんのサインに快よく応じてくれたのです。お客さんたちは最初一瞬信じられないような表情でキョトンとしていましたが、そのうちサインをもらったり、歓談したり、思いがけない訪問者にみんな興奮気味でした。翌27日は福岡への出発をマイルスだけ1日延ばして京都に止り、“しあんくれーる”の招待で老舗大さわへ天ぷらを食べに行きましたが、ここでもマイルスはたいへん気嫌よく〝日本へ来て今日が最高に楽しいよ〟と語ってくれました。その後、比叡山ドライブに向い、その帰途、クマノ神社前の「REMA」へも立寄り、ここでは2時間ほどの間に5線紙に何か思い浮かんだメロディを書くなど落着いた時をすごしてマイルスの京都の休日は終りました」

いやぁ、読み応えのある(今となっては)貴重な資料ありがとうございます。
個人的にはジャコのイメージが強い『ADLIB』ですが(笑)、しかし創刊号はマイルスについての、しかも星野ママさんを囲んでの座談会だったんですね。

でも、星野ママ、いいこと言ってますね。
電気マイルスの長尺演奏は後になればなるほど良くなると。

しかも、あの悪名高い(?!)『イン・コンサート』を平気で2枚かけるとは、サスガ!
なかなかマイルスのこと分かってらっしゃる。深いマイルス愛を感じますな。

マイルスに蕎麦を取り分けられてるマイケル・ヘンダーソンの姿、見たかった(笑)。

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