自著『ビジネスマンのための(こっそり)ジャズ入門』で書いたベーシスト、ポール・チェンバースについての解説、「フリーの星!ポール・チェンバース」を朗読した動画をアップしました。
コメント
龍 大阪さんからのコメント。
僕はベースに関しては素人なので、あてずっぽうですが、マイルスがモードに基づく作曲や演奏をするにあたり、そのときのベースはチェンバースというのは大きかったと思います。モードのコンセプトで作曲とアドリブを含めた演奏を、初めてマイルスがやったのは「マイルストーンズ」。マイルス自身も実験的な試みだったので、細かい指示がどれだけできたのかはわからない。というか不確定要素が大きすぎて、はっきりした指示はできなかったと思う。そのなかで、ジャズモードの模範となるベースラインを直感的に弾いたポールチェンバース。まさにミスターPC。パソコンじゃねえぞ(笑)
「So What」をベースでテーマリフを奏でるという発想も、そこからきてるのかも。信頼してたから。
よくわかんないけど、コードチェンジの激しい曲だと、ベースはルート音を弾いて、それに付加的にコードアルペジオを弾くと。その間のつなげるためにコードトーンではない音を使うみたいなことをやってるんだと思うんだけど、モードの曲だとそれだけだと単調になってしまう。だから、ベースも、もっと、スケールライクに弾く必要性が出てくるとか。その辺を感覚的にチェンバースはうまくやっていた。
>まさにミスターPC。パソコンじゃねえぞ(笑)
わはは、なんか笑えました。
ミスター・パソコン。
なんか、カッコ悪い(笑)。
たしかにご指摘のとおりだと思います。
おそらくチェンバースは、親分マイルスの意図を汲み取った上で、一生懸命スケールライクで「あろうとする」ベースラインを組み立てていたのだと思います。
本来、チェンバースは「コードライク」なベースラインを得意とするベーシストであり、もちろんマイルスもそのことを承知していたはずですが、当時の『マイルストーンズ』や『カインド・オブ・ブルー』録音時のバンドメンバーはチェンバースだったことからも、彼に任せることが最善だと判断したのでしょうし、他にあえてチェンバース意外のベーシストで、スケールライクなベースラインを弾ける人は思い当たらなかったのでしょう。
というより、まだまだ試行錯誤段階だったという時期もあり、チェンバース以外のメンバーにしたって、コルトレーンはかなり「コードライク」なフレーズが多いし、キャノンボールはかなり「Ⅱ-Ⅴライク」なソロを展開していますからね。ましてや、ベーシストにおいておや、だったのでしょう。
その上、マイルスは、おそらく簡素なディレクションしかしていないと思うのですが、そこからチェンバースがどのような付加価値をベースライン加味していくのかという興味もあったのかもしれません。
先述したとおり、チェンバースはコードライクなベースラインを組み立て、そこに大胆なパッシングノートを挿入することが得意なベーシストです。だからこそ、コードライクなアプローチを得意とするハードバッパーたちとの共演も多く、多くのハードバッパーからは信頼されていたのでしょう。
ですので、特に《ソー・ホワット》において顕著ですが、チェンバースのベースラインは「ドリアンスケール」というスケールライクなラインではなく、「Dm7」「E♭m7」というコードに基づくベースラインを組み立てているように感じられます。
だから、Dm7のAメロのパートのベースラインは、ドリアンスケールの「レミファソラシド」を基軸に組み立てているのではなく、あくまでDm7を構成する「レファラド」というコードトーンを材料として組み立ているように感じられます。
しかし、チェンバースは、パッシングノート(経過音)の使用が非常に巧みなベーシストなので、コードライクなアプローチには感じさせず、メロディックでホリゾンタル(水平的)なラインを形成しています。
ここがチェンバースの素晴らしいところですよね。
私が、コードトーンを滑らかに、水平志向に感じさせるベースラインに感じた理由は、Aメロ(Dm7)においては、2度の「ミ」と、6度の「ソ」の使用が極端に少ないことに気が付いたからです。
もちろん1つ1つの音を数えて統計を取ったわけではないのですが、学生時代に《ソー・ホワット》の音を拾っていた際、本来であれば、解放弦が使える「G」の音、つまり「ソ」の音の使用頻度が少ないことを、チェンバースのベースラインを実際にベースで弾いている時に感じたのですね。
他のいくつかの動画でも語っていますが、チェンバースは解放弦の使い方が非常に巧く、その解放弦とはほぼ1弦の「G」なんですよ。それを通常のスタンダードやブルースナンバーでは多用しているはずの「手癖」をあえて少量に抑えていること自体、かなり「コードトーン」を意識しているな(「ソ」の音は必要最小限にとどめたいのだな)という推測が生まれました。
たとえば、最初のコーラスの4小節を例にとると、
レレドシシ♭|ラソファラ
レレミファラド|レレ♭シシ♭|
ラ(←5小節目の1音目)
なのですが、
パッシングノートを思われるノートをPに置き換えると、
レレドPP|ラPファラ
レレPファラド|レPPP|
ラ(←5小節目の1音目)
と、コードトーン使用率が非常に高く、それ「以外の音」の出現頻度とブレンド具合のバランスが絶妙です。
特に、5小節目アタマの「ラ」に至るまでの、4小節目のコードトーン以外の3音を効果的に使って下降していく様は、さすがチェンバースというべき処理で、メロディック、かつDm7を4の倍数単位のユニットとしてとらえてストーリー(ベースライン)を組み立ていたのではないかと思われます(これは同じコードが4小節続くスタンダードも演奏していたこともあったチェンバースならではのアプローチの定石があったはずなので、半ば経験則から生まれた無意識のアプローチなのでしょうが)。
もちろん、この推測が正しいのかは分かりませんが、後のロン・カーターの《ソー・ホワット》のアプローチと比較してみると、ロンの場合は確信を持って「ミ」と「ソ」を使っているにも関わらず(もうロンの頃になると、完全にスケールに基づいた自由な解釈な旋律的アプローチを自在に出来るようにな時代になっていたのでしょう)、チェンバースのベースラインは、かなりオーソドックスかつ保守的に感じます。
しかし、だからこそ良かったのだと思います。
モード奏法の曲をやろうぜと提唱したリーダーであるマイルスですら、Dm7のコードトーンを中心に、確認するように、噛みしめるように一音、一音をトランペットで吹いていますからね。
だからこそ、『カインド・オブ・ブルー』における《ソー・ホワット》は、「地に足が付いた感」のある特別なものとして仕上がっており、後のハービーやロンの時代の抽象度が高い佇まいとはまったく様相の異なる「特別感」が醸し出ているのだと考えています。
「あの時代(モード奏法黎明期)」の、各ジャズマンの「理解レベル」だからこそ生まれた、良い意味での安定感と革新性。いわば、ハードバップの安定感がベースとなった「少し新しい感じ」の奇跡的な配合バランスが、いまだに色褪せない「聴きやすさ」と「新しさ」をもたらしてくれているのだと思っています。
だから、チェンバースにとっては、「いつもやっていることよりも、少しだけ新しいアプローチ」だったからこそ、余裕と安定感のあるリズムの礎を築くことが出来たのでしょう。
永井勉さんからのコメント。
こんばんは永井です・・・
ありがとうございます・・・m(__)m
ジャズにおいては冊子を読んで知識を得たことは一度もなく
すべて耳からなので、この企画は助かります・・・m(__)m
リクエストですけどモンクとかマイルスとかは何とかイメージ
出来るのですが、エリントンとかビル・エバンスはどうなるんでしょうか・・・???
😅😅😅
それは良かったです。
>ジャズにおいては冊子を読んで知識を得たことは一度もなく
すべて耳からなので、この企画は助かります・・・m(__)m
エリントンに関しては本の中では触れていないのですが、エヴァンスについては書いていますので、今後アップしたいと思います。
お楽しみに~♪
>エリントンとかビル・エバンスはどうなるんでしょうか・・・???