山下洋輔の『クレイ』とセシル・テイラー

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YouTubeにアップした動画にいただいた視聴者からのコメントにアンサーしているうちに、話がどんどん、山下洋輔の『クレイ』の話と、セシル・テイラーの話に飛んでいきました。

山下洋輔とセシル・テイラー。

似て非なる、2人のピアニスト、どこが違うのか、みたいな話をした動画をアップしました。

あなたは、セシル派ですか?
山下派ですか?

個人的には、セシル派なんですが、それでも、山下洋輔の『クレイ』は凄い!

めちゃくちゃ迫力というか、ドスの効いたアルバムですね。

ものすごくドラマティック。

これほど、「分かりやすく」「ドラマティック」なアルバムは、さすがにセシルの作品には無……、

いや、あった!

『コンキスタドール』。

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これは、流れが分かりやすい音楽ストーリーですね。

とはいえ、圧縮感はを含め、『クレイ』とは全然肌触りが違うけれど……。

いずれにしても、両方凄い!

動画に投稿された方は、『クレイ』を聴いてクラリネットをはじめたそうですが、吹奏楽部で坂田明風に吹いていたら、きっと先輩や先生に怒られたんじゃないかと思います(笑)。

しかし、私ももしクラリネットを吹けたら、きっと坂田風、疾風怒濤フリージャズ奏法していただろうなあ。

コメント

kamaichi2002さんからのコメント。

雲さん、こんにちは。
またまた、わたくしのコメントを取り上げてくださり、ありがとうございます。
「クレイ」は発売と同時に買いました。高校2年だったと思います。西独(当時)のenjaというレーベルでしたね。
ぶちのめされました。雲さんもおっしゃっているように、おどろおどろ感が半端ないよなと感じました。
そして、2曲目の「クレイ」! 坂田さんキレっぷりがもう最高。のちのパンク・ムーブメントを先取りしていたというか、最初から超越していましたね。
このLPまだうちにあります。爆音で聞きたいけど、近所の人のことを考えるとかけることができませんw。完全に騒音公害といわれますw。

ここで、これにまつわるエピソードをひとつ。
高校の音楽の時間に、「自分の好きな曲を紹介し、解説する」という授業があり、わたくしはこれをかけました。当時音楽室は最新のオーディオが導入されたばかりで、爆音で鳴らすことができました。
女の子はドン引き、ロック小僧たちはお口あんぐり、なぜか先生には大うけ。音大出たての女先生は現代音楽派で、おまけに「現代音楽の成立の経緯」などという臨時講義もしていただきました。「調性・定速リズムからの逸脱」という内容だったと思います。
先生はこうもおっしゃりました。
「かまいちくん(高校時代のあだ名なんです)、あんたクラやってたわよね。ジャケット見ると、この男の人(坂田さんを知らない!)クラも吹くみたいね。こんなふうにちょっと吹いてみてよ」
「無理です。こんな音量出ません。テナサク(テナー・サックスをブラバンではこう呼んでいました)ならなんとか行けるかもしれませんが、和声と定速リズムがあったほうが僕は楽なんです」
「あれれ、逸脱を恐れるの?」
「滅茶苦茶をやることの方が難しいですよ。1分くらいならなんとかサマになりますが、そのあとはおなじことのくりかえしになります」
「ふーん、かまいちくんて意外と保守的なんだぁ」
「(沈黙―返す言葉がない…)」

懐かしい思い出です。

すごい理解のある先生ですね!
うらやましいです。
でも、先生のほうが生徒よりもイケイケだと、引いてしまうのかも……。

永井勉さんからのコメント。

セシルテーラー 難しいです!!
でも ひとつ 解ったのは
この音楽をいかに自分のスケッチブックに絵画的に
捕まえる事が出来るか・・・それしかないのでは???
個人的には絵だと思います!!
真っ白なキャンバスに セシルテーラーの音(絵)を重ねていくと
意外と面白く聴けます!!

それは面白い発想ですね。
じつは、90年代だと思うのですが、セシル・テイラーと即興演奏集団が「にってぃんぐ・ファクトリー」というライヴハウスで演奏をしている映像を見たことがあるのですが、彼らの激しい演奏を身体に浴びながら絵を描いている前衛画家風のおじさん(おじいさん?)がその映像の中に認められました。やっぱりそうさせる何かがあるのかもしれませんね。

Lennonist 9さんからのコメント。

クレイはロックとクラッシク漬けだった自分をジャズに引き込んだ銘盤。山下、坂田、森山!凄まじい演奏に圧倒された大学時代が懐かしいな。格闘道とも言える日本人ならではのフリージャズ。

いや〜まさにおっしゃる通りですね。
《クレイ》、あれはもう“ジャズ”というより“儀式”ですよね(笑)
私もあの作品を初めて聴いたときの衝撃は、今でも耳に焼き付いています。
特に《ミナの〜》がヤバい、時代を超えてヤバヤバです🤣

坂田氏の「引きずるようなテーマ」からして尋常じゃないですし、
森山さんのドラムの“間合いの怖さ”、いや、おどろおどろしさ?
そして山下氏のピアノが持つ“構築と崩壊の同居”。
あの三人がぶつかり合いながらもどこかで全体を俯瞰しているような――
あのテンションは、日本人ならではの「格闘としてのフリージャズ」と言っていいのかもしれません。

「ロックとクラシック漬けだった自分をジャズに引き込んだ」には思わず頷いてしまいました。あの音楽は、何かの壁をぶち壊してくる力がありますよね。
個人的には、あのライブを体験した当時のヨーロッパの聴衆の静寂と緊張感、
そして拍手のタイミングまでもが音楽の一部になっているように感じられて、
「これは現場で聴いた人は一生忘れられないだろうな」と思わされました。

Lennonist 9さんがおっしゃるように、あれはまさに“日本的”なフリー。
特に『クレイ』のような作品が体現しているのは、単なるフリーインプロビゼーションではなく、“カタルシスを生むために張り巡らされたストーリー構造”がしっかりあるということですよね。

セシル・テイラーとの比較もよくされますが、私はあえて言うなら、セシルが「自分自身の内部で完結するエネルギー体」だとすれば、山下さんたちは「共演者と観客の目の前で、“今、ここ”を構築する闘い」なんだと思っています。

それぞれ違うけれど、どちらも圧倒的に“本物”で、聴くたびに背筋が伸びます。
そしてそういう感覚を一枚で味わわせてくれるのが、やはり『クレイ』なんですよね。

大学時代にこのアルバムに出会っていたというのもまた、素敵な時間軸です。
時代も場所も違っても、「これは本物だ」と感じる感性はいつの時代も変わらないんだなぁ、と改めて思いました。

素敵なコメント、ありがとうございました。

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2019年1月20日