ビッチェズ・ブリュー発売直後の評論家

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TAKESI0506さんからのコメント。

粟村さんは、ビッチェズ・ブリュー発表直後にアメリカに渡って、いろんなグループを聴いたそうですが、その中で最大の感動はマイルス・セクステットだったそうです。
 実演に聴くマイルスは、彼の過去のいかなるレコードにも記録されていないような凄まじいハード・ブローイングの連続で聴衆をノックアウトしたそうです。
 ビッチェズ以降を認めなかった粟村さんも、レコードと生演奏の違いを思い知らされたのかもわかりませんね😓

粟村さんのアメリカ渡航の話は、スイングジャーナル70年7月号から始まる「論争有用」という企画において書かれたものです。粟村、岩浪、中村とうようの三人が、まず岩浪さんから自分の意見を述べ、次号でそれに対して粟村さん意見を述べ、次号で中村とうよう、という順で意見を戦わすという趣向です。
粟村さんの文章の一部分はこのようになってます

 今回僕がアメリカで聞いた幾つかのグループのうちで最大の驚きは生で聞いたマイルス・デヴィス・セクステットの素晴らしさであった。いま話題の「ビッチェズ・ブリュー」は帰国後に初めて耳にしたが、イン・パーソンのマイルスのラッパに感動した僕の耳は、容易なことではこの新作品の良さを受けつけようとはしなかった程である。正直に言って今に至るもなお僕には「ビッチェズ・ブリュー」の真価はよく分らないのだが、それはそれとして、僕の聞いたマイルス・デヴィスは過去のいかなるレコードにも記録されていないような凄まじいハード・ブローイングの連続で聴衆を圧倒した。無諭チック・コリアは家政婦の小母さん然とした風貌で僕の嫌いなエレキ・ピアノを弾いていたし、綺麗にヒゲを剥ったディブ・ホランドは意外なほど可愛い顔をして僕の大嫌いなエレキ・べースを弾きまくっていた。だがまことに不思議なことに、レコードではあれほど耳障りに聞こえたこれらの電化楽器のサウンドがステージの前に座った僕の耳にはほとんどなんらの抵抗もなしに入り込んで来るのだった。ナマだから音が良かった訳ではサラサラない。エレキピアノは狭いホールにこだまして常にもまして不愉快な音を発していたし、ホランドのベースはアタッチメントの具合がわるいらしく、時々「ジージー」という怪音を発するくらいに調子が悪かった。
 ではこのマイルスセクステットの演奏が僕を完全にノックアウトした原因はどこにあったのだろうか? 今にして僕ははっきりとそう言えるのだが、マイルスコンボ最大のスターは言うまでもなく御大のマイルス自身であり、圧倒的迫力で満座を攫った当のマイルスが、電化楽器のサウンドの中に特別なイマジネーションを求めている感じがほとんどしなかった――という点にマイルス六重奏団に対する僕の感動の最大の要因があったのでは――と思えるのだ。マイルスを含めたアメリカの一流ミュージシャン達が電化楽器のサウンドに寄せる関心は、海の彼方の我々が考えているほどには大袈裟なものではないように僕は思う。

 粟村さんのレコード評には「スタジオ録音の演奏にありがちな缶詰音楽の味気なさ」というフレーズが何度か出てきます。また多重録音などのテープ操作は認めようとしなかったところから察すると、全体としての出来よりも、個人のプレイの方に重きを置いていたいうことができるのかもわかりません🙂

私はロックやポップスからジャズに入りましたし、高校生の頃はロックもジャズも並行して聴いてましたので、ロックをかなり汚い言葉で罵る粟村さんには、当時はかなりムカついたのは確かです。
 次号の「論争有用」で中村とうようさんは、このように反論しています。

 ロックにたいして耳にフタしていて今日のジャズを語ることができるのか。マイルス・デイビスの演奏を生で聞き、「電化楽器のサウンドの中に特別なイマジネーションを求めている感じがほとんどなかった」と判断し、ロック嫌いの粟村は胸をなでおろしたらしいが、ロックをろくに聞かないで、何を基準にそのような判断を下すことができたのだろう。「演奏者が一時の手なぐさみやちょっとしたコマーシャリズムのつもりでやっている」うんぬんという判断にしたところで、自分を安心させるための口実としか見えない。彼自身すぐそのあとで「ロックとエレキが最大の話題というアメリカ・ジャズ界の沈滞ぶりは本当に悲しい」と本音を吐いているのである。

 私も、過去の記事を電子化しているのをいいことに、お手軽にコピペしてコメント欄に載せてますが、たとえ自分が信頼する人の文章であろうと、読む人にとっては気を悪くすることもあるのだから、もう少し吟味してから載せないといけないと反省しています。
 失礼しました😪

こちら

上記コメントに引用された評論家・粟村政昭氏のテキストを読むと、『ビッチェズ・ブリュー』が発売された1970年春の当時のアメリカ(マイルス)の状況と、目まぐるしくスタイルを変化させてゆくマイルス・デイヴィスが、当時どのように受け止められていたのかが伝わってきて、非常に興味深いものがあります。

そこで、このTAKESI0506さんとのやりとりを元に語った動画をアップしました。

発売から50年が経ち、『ビッチェズ・ブリュー』という作品に影響を受けた音楽や、『ビッチェズ・ブリュー』に参加したミュージシャンたちが後に発表した音源を聴いている者が抱く感想と、当時、このような予備知識のないまま突然、(当時は)突然変異的な音楽に邂逅した評論家とでは、受ける印象がまったく異なったはずです。

もしかしたら、ペリーが浦賀に来航した時の「黒船ショック」に近い衝撃と波紋で当時のジャズシーンは(評論家たちは)受け止めていたのかもしれません。

それこそ、「攘夷か・開国か」が問われるように、ビッチェズを「認めるか・認めないか」あるいは、「ジャズや否や」という、ある種評論家としての見識やスタンスを問われた大命題が『ビッチェズ・ブリュー』によって突き付けられたのだなということが、粟村氏、および中村とうよう氏のテキストからは伝わってきます。

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コメント

くまが集う喫茶店さんからのコメント。

僕が『ビッチェズ〜』で
一番楽しみにしているのは
あまり指摘されないけど
『ウヒヒヒ』と忍び笑う様な
ベニー・マウピンのバスクラです。

マイルスはドルフィーの
バスクラを酷評したそうですが

『でも…。バスクラって楽器は
なかなかイケてんじゃねぇか?』

とマイルスはバスクラに
一目置いていたのではないか
と思ってます。

時系列的には
後にマウピンやマーカス・ミラー
に暴れ過ぎないバスクラを吹かせて

『この吹き方なら良し!』
としたと推理してます。
(^o^)

そうそう、モウピン!
『ビッチェズ・ブリュー』においてのベニー・モウピン効果は大きいですよね!

特に《ファラオの踊り》や《スパニッシュ・キー》においては、モウピンのバスクラが無ければ、かなり違ったテイストの仕上がりになっていたんじゃないかと思います。

うごめくエレピの下でブーーーーーーと、ある種呪術的な(?)怪しさを加味している彼の貢献度は計り知れません。

さすが、くまが集う喫茶店さん!

ドルフィーのバスクラを「馬のいななき」と言ったマイルスではありますが、バスクラそのものは嫌いではなく、この楽器がアンサンブルにもたらす効果には関心があったのかもしれませんね。
(あるいは、ギル・エヴァンスの助言かも?)

たしかにマーカス・ミラーも吹いてました。
ライヴ中に停電になった際、バスクラを吹いたという逸話は有名ですよね。

Jさんからのコメント。

そうですね~     ふりかえってみるのも  いとヲかし 

ビール考     最近 若者のビール離れが 多い
        ハイボールだそうだ    焼酎も ハイボール 酎ハイというそうだ        若い人には ビールちと苦い飲み物だ     そいえば 若い頃聴いたビートルズ なんか高い音で やや安っぽくも感じたなあ      今?  違和感ないね    はは
もう高い音聞こえね~や    苦み?  それ旨味のことけい?
経年 なんか いいこともあるのよう~
日本酒にせよ 焼酎にせよ 若者の オジサンのウンチク離れもあるのかな~     で サッパリハイボール!
その点 ジャズのウンチクは 楽しいO(≧∇≦)o   それもオジサンだけ? ~                 J

1993年頃、モッくん(本木雅弘)のCMで「サントリーリザーブの会」というのがありまして、要するに若者たちのウイスキー離れを食い止めようという企画なんですけど、その1年くらい前から、酒造メーカーの人から、「若者はウイスキー飲まないよね、キミ飲む? エラいね、若いのに。どうしたら、君たち若者はウイスキーを飲むようになるのかなぁ?」なんて、よく聞かれてました。バーとかスナックとかで。
あれから30年も経つんかぁ。
あの頃より、もっとウィスキー離れが進んでるだろうなぁ。

Hiromi Hasegawaさんからのコメント。

評論家もそうですが、当時のジャズメンはどう受け止めたのかも気になります。全く自信はないのですがジョー・ヘンダーソンの”Black is the Color”にはそーいう匂いがします。例の岩崎千明氏は「STEEPLE CHASEやPablo Recordsなどヨーロッパレーベルの勃興はマイルスへのカウンターだ」と書いていて「えっ、そうなの?」と思いましたが、この辺は時代の空気すってないとなんとも言えません。

たしかに気になりますね。

多かれ少なかれ、自らの立ち位置を考えたジャズマンも多かったんじゃないかと思います。そのあたりのインタビュー記事があれば読んでみたいですね。

大別すると以下の4つに分かれるんじゃないかと思います。

1,変わらなきゃ!⇒新しい試み
2,変わらなきゃ!⇒そのまま
3,変わる必要なし⇒そのまま
4,俺には関係ないもんね⇒そのまま

スティープル・チェイスなどのヨーロッパのアコースティック4ビートレーベルは、「3」や「4」なんでしょうね。

Hiromi Hasegawaさんからの返信。

Pabloは明らかに4ですね。Steeple Chaseはケニー・ドリューの”Dark Beauty” やサム・ジョーンズの”Double Bass ”は愛聴盤ですが「少し変わった」気が。
あと強引に日本に話題を振ると ヘアピン・サーカス(1972)https://youtu.be/P0jJhwPjyok?t=70
サントラ盤の解説を執筆しているほか菊池雅章氏を監督に紹介したのが児山編集長という「スイング・ジャーナル協賛映画」。菊池雅章氏はエレピの他アメリカから持ち帰ったアープ・シンセサイザーを演奏してます。

カトウシュンさんからのコメント。

チック・コリアを「家政婦のおばさん」の例えに笑ってしまいました。
しかし、近年のネットニュースで見出しや単語のみで反応し怒りコメントを書き込んでいる人を見たりしますが、昔から一定数いたんですね。私も気を付けなければm(_ _)m

私のほうも、けっこう調子にのってくると暴言吐いてしまいそうなところがあるので気をつけねば……(汗)。

要は想像力なんでしょうね。

たとえば、電車の中で子どもをキツい口調でりつけている母親がいたとすると、「叱っている」という「点」でみれば、なんてヒステリックな母親だろうと思うかもしれませんが、「線」を想像すると、この母親はもしかしたら、夜泣きやグズりで眠る暇もないほど子育てに疲れていたから、そういう行動になってしまったのではないか?とも考えることが出来ます。

さっ、もっとたくさんフリージャズを聴いて想像力を鍛えよっと!(ん?!)

TM MTさんからのコメント。

粟村さんの言うこと何となくわかるような気がします。ファンクな「セラードア」ロックな「ジャックジョンソン」に比べて中途半端な感じがします。「ビッチェズ」はボックスで持ってますが良さがよくわかりません。ジャケットが格好いいので残してますw でもブートの「swedish devil」は素晴らしいと思います。何でだろ?

『スエディッシュ・デヴィル』!
いいですねぇ!!

>でもブートの「swedish devil」は素晴らしいと思います。何でだろ?

私も「何でだろ?」ですが、おそらく、たぶん、のレベルですが、緊迫感、ヒリヒリ感の違いなのかな?
?と。

『ビッチェズ・ブリュー』は、たしかに不穏な感じ、スケールの大きさ、広がりと視界のボヤけた遠近感の妙といった多義的な情感をこちらにもたらしてくれる豊穣な音源ではありますが、そのぶん、シンプルかつストレートにこちらにガッツーーーーーーーンとスピード感をともなって迫ってくる要素は『デヴィル』に比べれば少ないかな、と(まあそれは仕方がないと思います)。

たしかに『デヴィル』でも《ビッチェズ・ブリュー》を演奏していますが、少人数編成かつライヴ演奏なので、スタジオ録音とは違うむき出しのストレート感が感じられます。

そこが感触の違いなのかな?なんて思いました。

博 橋本さんからのコメント。

TAKESI0506 さんのタイムリーな資料提供と雲村長の的確な岡目八目のお陰で粟村さんに歳だけ食った
現在の己を改めて近づけ直せました。
有り難うございました。
今後とも資料の御提供を楽しみにしています。

TAKESI0506さんの資料、次は何がくるのかな?といつも楽しみにしています。

永井勉さんからのコメント。

モンク菌が増殖して脳内でスネークマンショーが
流れ続けている永井です・・・m(__)m
BITCHES BREW を聴いて最初に思ったのが
2曲目のBITCHES BREWが凄いですよね!!
最初のルート音の後に突然不協和音が流れます
そのあとパンでマイルスのトランペットが左右に振られます・・・
そこだけで 直感的に凄い刺激を受けるんです・・・m(__)m
私だけしょうか・・・・・?????

>脳内でスネークマンショーが流れ続けている
それは素晴らしい(笑)!!!!

>私だけしょうか・・・・・?????
いえ、私もです。

まぐまぐさんからのコメント。

ビッチェズ・・・は 正統派ジャズ好き(ビバップ、ハードバップ)としては ジャズでは無いよなーw  麻薬のトリップ音楽w  トランペットの雑音w  
こういう感じ 俺の中では フリーってこういう感じ・・・ 雑音 ww   よーわからん 音楽w 

俺は 無理やわ・・・ こういう 音のオナ〇ーw   何もわからんしなw   何なん?これ?   自慰行為でおまw   さっぱりわからんw