凄すぎるジャズピアニスト アート・テイタム伝説

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先日アップした動画「ジャズピアノの巨匠 アート・テイタムの凄さ」(⇒こちら)にいただいたコメントを動画で紹介しています。

コメント

TAKESI0506さんからのコメント。

スイングジャーナル75年6月号に、マイルスと児山紀芳さんの対談が載ってます。以下はその一部です。

児山「チャーリー・パーカーが死んで20年になるんですがそのことは憶えてましたか」
マイルス「憶えてるよ。でもパーカーもコルトレーンもデュークも、彼らのブックはもう閉じられたんだ。あまり想い出したくないね」
児山「でも、パーカーのもので好きなレコードってのもあるでしょう」
マイルス「いやな質問だね。故人のことは話したくないよ」
児山「アート・テイタムは?」
マイルス「オー、彼は真の天才だよ」

 児山さんが、なんとか昔の想い出話を引き出そうとするが、マイルスが全く乗ってこない様子がありありとわかりますが、アート・テイタムの名を出した途端に「オー、彼は真の天才だよ」と応じるマイルス。マイルスのような過去を振り返らない、誇り高いミュージシャンにしてからが、アート・テイタムというピアニストは信じがたい存在であったのではないでしょうか。

アート・テイタムをあれほど愛したノーマン・グランツ氏はアイラ・ギトラーとの対談でマイルスについて語ってます。

グランツ――批評家やミュージシャンが何といおうと、私はもともとマイルス・デイビスなんて好きになったことはない。あるいは、私にその感性が欠けているからかも知れないが、私はマイルスが嫌いだね。
ギトラー――マイルスのすべてが?
グランツ――ああ、すべてダメだね。私はマイルスと一緒にコンサートを打ってまわったこともあるよ。レコーディングでマイルスを使ったこともある。でも好きになれなかった。チャーリー・パーカーは、レコーディングでマイルスをよく使いたがったんだ。それに対して私は、反対したもんだよ。マイルスもそのことは知ってるよ。とにかく、マイルスって男は頭の回転の早い男だし、世の中の動きに敏感で、機を見るに敏なところがあるんだ。それを巧みにベールで包んでいるだけだよ。
ギトラー――そうかもしれない。しかし、少なくとも「ビッチェズ・ブリュー」以前のマイルスは、ジャズの最前線にあって、ジャズ界のリーダーでありつづけたんだ。ところが、ある日突然、白人のロックに目がくらんだとしか思えないんだ。
グランツ――陥し穴に落ち込んだんだよ。もっとも、白人のロックに目がくらんだといったって、一体そこから何が得られると思う。何ひとつ得るものなんてないよ。「ビッチェズ・ブリュー」をみんな凄い凄いっていうけど、以前からのマイルスがやってるだけだよ。
ギトラー――周囲のミュージシャンが代っただけでね。ところでノーマン、マイルスが嫌いだっていうけど、例のオリジナル・クインテットまで嫌いだとはいわないだろうね。
グランツ――私が一緒にツアーしたマイルスのバンドは、ウイントン・ケリー、ポール・チェンバーズ、ジミー・コブがリズム・セクションだった時代のバンドだよ。
ギトラー――マイルスについては、このくらいにしよう。個人的な好みの問題にからんでくるからね。

ハービー・ハンコックは、マイルスに関して感動的な話を披露してます。

 64年7月、マイルス・デイヴィスの初日本ツアーに同行した。わたしにとっても初の日本訪問だった。わたしは、まだ24歳だった。日本ツアーで忘れられないことがある。どの街かは忘れてしまったが、ある晩、コンサートを終えた時だ。その頃のマイルスは、ステージ外では聴衆とあまり直接触れ合わないようにしていた。つまり、サインとか。ステージを降りて楽屋に向かおうとすると、たくさんの人がサインを求めにやってきた。
 その中にひとり、本当にマイルスのサインをほしいと思っているのだなと感じさせる若者がいた。ずっと熱烈なファンだったと言っていた。それが嘘ではないと感じさせる何かをその青年は持っていて、宝物、つまりマイルスのサインを心から望んでいた。だから、わたしはマイルスの楽屋に入っていき、外にいる若者が、真剣に、サインをしてもらいたがっていることを伝えた。マイルスは「おれにサインしてほしいなら、おれに直接頼まないとダメだ。お前に頼むんじゃなくてな」と言った。だから外に出て若者に「たぶん大丈夫だと思うよ」と伝えて、マイルスの楽屋に招き入れた。
 マイルスが、最初に何をしたと思う? なんと、若者に丁寧にお辞儀をしたんだ。若者は泣いていたよ。美しい光景だった。マイルスは、にっこり笑ってサインした。見ていて、とても感動した。マイルスは、若者にきちんと対応したんだ。たぶん彼の真摯さを感じ取ったんだろう。彼は、20代のはじめに見えた。わたしは、マイルスがそんなことをするのを見たのは初めてだったし、予想もしていなかったよ。すばらしい思い出だ。その後、わたしはマイルスの見方が変わったんだ。

73年の「アドリブ」誌の創刊号はマイルス特集で、油井正一、中村とうよう、鍵谷幸信、植草甚一、京都のジャズ喫茶「しあんくれーる」のママの星野さんという、とんでもない顔ぶれの座談会が載ってますが😥
 星野さんがマイルスのことを語ってます。

鍵谷 アメリカの雑誌などでもマイルスは傲慢で、子供っぽくて独占欲旺盛などといわれてますが……。
星野 確かに9年前にお会いしたとき第一印象は傲慢な方だと思いました。でもこんどお会いしてすごく思いやりがあってすてきな方だと……。金沢の公演のときご一緒したんですが、駅のホームで中年の女の人が重い荷物を持って歩いてるんですね。そしたらマイルスは気軽に手を差し伸べて彼女の荷物を持ってあげるんです。彼にはそんなところがあるんですね。
鍵谷 マイルスの食事の好みなんかはどうなんでしょう。
星野 そうですね。お店の前にサンプルが出ていますでしょ。あれをのぞきこんでとっても無邪気とでもいうんでしょうか、すごく面白がってあれがいい、これがいいってね。そのときはおそばなんか珍しいのでしょうか、みんなで食べまして。それでマイルスはベースのマイケル・ヘンダーソンの皿におそばを取りわけてやったりするところなんか、サイドメンをだいじにしているって気がいたしました。

アート・テイタムから、マイルスの話になってしまい失礼しました😪

博 橋本さん⇒TAKESI0506さん

早起きは三文の徳😃
それぞれのマイルス評を朝から気持ちよく楽しめました。
有り難うございます。

高松貞治さん⇒TAKESI0506さん

あのマイルスが若者にお辞儀とは驚きですね!やはりジャズは全てマイルスにあり!ですね。TAKESI0506さん、貴重な情報をありがとうございました😊

kankannouさんからのコメント。

ピアノ座頭市♪♪!!(゜ロ゜ノ)ノ

まさに😆

高松貞治さんからのコメント。

赤井英和の映画「どついたるねん」は傑作ですね!

章 副島さんからのコメント。

phineas newborn jr はどうなんでしょうか? テイタム も ピーターソンもフィニアスも 余りブルースは弾かない 後継者も少ないイメージ 決定的キャッチーな1曲とアルバムが無いからでしょうか? テイタムやフィニアスは一度見たかったですね

たしかにフィニアスも、かなり才気走った超絶ピアニストでしたが、知名度、イメージという点ではテイタムやピーターソンには引けを取る感じがしますね。
それにはおっしゃるとおり、強烈なアイコンとなる要素(代表曲やアルバムやアルバムジャケット、エピソードなど)が少なく、その少なさは、継続的な活動をしていなかった(クスリや健康上の理由などで散発的な活動だった)ことが大きな原因だったのではないかと考えています。

mariさんからのコメント。

フィニアスさんの「オレオ」というアップテンポの曲を聴いた時、オクターブユニゾンでこんなに速く弾けるのかと衝撃を受けました。
ストレイホーンの「ラッシュライフ」での歌心や間が素晴らしく、決して超絶技巧だけではない素晴らしいピアニストだったと思いました。

表現のレンジの広いピアニストですよね、フィニアスは。