ミンガス・アンティーブ評〜’79年『スイングジャーナル』記事と広告より

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スイングジャーナル1979年5月号に掲載されていた『ミンガス・アット・アンティーブス』のレコード評と広告を紹介しています。

私が持っているのは輸入盤のCDですが、発売された当時は日本先行発売だったのですね。

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コメント

人力飛行機さんからのコメント。

またまた主さんに言われるまま視聴してみましたが。これは楽しさいっぱいといおうか。基本5人バンドだと思うんだけど急にソリストになったり、2人になったり3人になったりめまぐるしい自在なんですねえ。ソリストで聴かせる。2人になったり3人なったり自在。誰かが指示するんですかねこういうのは。どうなってるのか見当がつかないほど有機的でアメーバなのが面白いですね。曲の中でどんどん形が変わってしまうのが面白い。またそれで個々が上手くて聴かせるから。

印象に残ったのは3曲目What Love?でのミンガスのブインブインのベースとドルフィーのバスクラのソリストぶり。4曲目I`ll remember April終盤でのドルフィーとブッカー・エルヴィンのサックス同士の猛烈な小競り合い。苦笑するくらいな小競り合いをやってる。ローテーションにも聴こえるけどそれだけじゃない。相方のサックスを上回る気満々でいいんですね。「ふざけんな!」的エゴが感じられて。やっぱりメンバーが他を立ててるだけなよりか「自分が上」ていう匕首をどっか隠してやったほうがバンドは面白いですね。5曲目Folk Forms 1の終盤もサックス2本+トランペットが「やかましいわ!」とばかりに一斉にブア~と「オレがオレが」目立ってきてそこも良いです。

エリック・ドルフィーってやっぱりコルトレーンとやってるときって、相方の生真面目な性格が息苦しかったんじゃないのかなとこれ聴いて思いましたね。ここではコルトレーンとやったときよりもあんまり素っ頓狂じゃないと思うんですよね。あれほどに外した感じは出さないというか。ドルフィーって故意に素っ頓狂やってたんじゃないかってちょっと感じましたね。タモリが「コルトレーンは好きじゃない」って言ってましたけど、ドルフィーってタモリに感性が近い人だったんじゃないですかね。生真面目な人視るとふざけたくなる人(笑)。

あと、ミンガスのベースがいいですねえ。ブインブイン。いかりや長介が晩年にCMに出て渋くベース弾いてるのあったけど、あれはもしやミンガスのテイストを狙ったのかなって思いました。いやにいかりや長介渋くなってどうしたんだって思ったけど。ミンガスの真似か?と。

長さんのベースは、どちらかというとロン・カーター的だと感じました。
アコースティック畑の人がエレキ的なベースラインと音色に(結果的に)なっているロンと、基本エレキがメインの人がアコースティックに寄せて弾いている音色、ベースラインが、結果的に似ているという。

ピックアップで弦の震えを拾ってアンプで増幅、(アコースティックに比べれば)大音量で鳴ることを前提としたベースライン、同じ音をブツっと切り微妙にアクセントを変えながらも執拗に繰り返していくところなどは、ミンガス含めてアコースティック畑のベーシストは(単純すぎて?)あまりやりませんが、ロンの場合はCTIの頃から多用している演奏も散見されるようになってきます。
これは、CTIレーベルが多く起用していたビリー・コブハムの影響が大きいのかもしれません。

コブハムは、大音量かつ手数の多いドラマーですので、ベースも電気増幅で大音量で対応、しかし手数の多さに対してベースが手数や音のバリエーションで対抗したところで、リズムの安定感が損なわれる危惧もある、だから、シンプルにボトムを提示する音を執拗に繰り返す。ただし、アクセントや長さ、休符の位置を工夫しながら。
これはあくまで私の勝手な推測に過ぎませんが、マイルスと演っていた頃のロンのアプローチとは明らかに異なってます。
「発展の可能性の種をベースで撒く」のがショーター、ハンコック時代のマイルス・クインテットのベースのアプローチだとすると、ポピュラー寄りなレーベルカラーのCTIでは、「安定感と曲の具体的な輪郭を提示」するアプローチになっている。つまり、シンプルになってきている。その時のロンの電気増幅ベースのアプローチと長介さんのベースが、なんとなく似ているかなぁと感じました。
ちょいブーミーな感じの音色や、音程の悪さも含めて(笑)。

サントリー・ウィスキー・ホワイトのCMまで意識していたかどうかまではわかりませんが(動画)、制作側は、もしかしたら意識していたのかもしれませんね。

人力飛行機さんからの返信。

(笑)本当だ。あCMでのいかりや長介のフレーズはBlues Farm(1973年CTI)でのロン・カーターっぽいですね。スラーを多用するところとか。アンティーブのミンガスもいいんだけど、あの70年代のロン・カーターはまたたしかにマイルス時代のとは違う。自分がリーダーだっていうのもあるんじゃないですかね。なんか音が際立って、全然自分が引っ張る気になってるというか。底辺から支えるというよりはむしろリードする気概というか。前面にいるから。フロントとしての矜持というか全然そこが。実際ヴォリュームも大きくしてるわけでしょう。マイルス時代よりも。もう目立っていいわけだから。

改めて視るとあのいかりや長介さんのプレイってあれはPCに繋いで?増幅させるタイプで。で予めある曲に合わせてダビングできる。ああいうのってあるんだなあ。知らなかった。ああいうのだったって改めて視て知った(笑)ああそうだったのか。いや面白いです。

たしかに、70年代のロン・カーターのはもうelectric導入。ベースはアコースティック音ぽいけど。鍵盤はelectricなんですね。そこでいかりやさんのもむしろベースもアコースティック時代ではなくてelectric時代の進化形テクノロジーにいかりやさんはもうベース演奏では付いて行っていたという。あの音って聴き直してみるとけっこう先端ぽい。モダンジャズぽくはない。あそこでいかりやさんが年取ってても先端に付いて行ってるってところでまた新味を出そうという意図があったのかもしれない。老いてても感性は新しいという。ですよね。