【ライナー読み】ムーズのライナーにむずむず

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ザ・スリー・サウンズの『ムーズ』のライナーノーツを読んだ動画をアップしました。

このライナーノーツを執筆したのは、昔、神保町にあったジャズ喫茶『響』のマスター・大木俊之助氏。私が持っているCDのライナーノーツの執筆者は別な方なので、わざわざ博 橋本さんが大木氏執筆のライナーノーツのコピーを私のところに送り届けてくださいました。

で、それを朗読した動画をアップしたという次第です。
本当にただ読んでいるだけの単調な動画です。
ま、単調なのはいつもの通りではあるのですが…。

コメント

博 橋本さんからのコメント。

早朝より朗読の配信、お疲れ様でした。

大木さんのライナー・ノーツは御披露頂いたとおりです。
好悪は先ずおかせて頂いて、サービス精神豊富なオーナー振りをつい盛ってしまう(?)大木さんらしい一文。
神保町という唯一無二の場所で、Jazzと憩の場を学生に惜しみなく提供してくれた大木さんには未だに感謝しています。
1932年(昭和7年)生まれ。現在73歳の私にとっては叔父達と同世代の方。
『響』の開業が1964年。大木さんが ”Moods” を入手した当時ではルース・メイソンの情報などは皆無だったと思えます。たぶん😅
但し私が学生時代には既に”Moods”と”Bossa Nova Soul Samba”のジャケットの写真は後にライオンの奥さんとなった女性。“ルース・メイソン” である、という事は皆知っていたと思います。出所は今となっては不明。
但し”クール・ストラッティン” の脚の主はその時点では判明されていませんでした。マリリン・モンロー説が有力だった😅
今ではこれも、謎は解けたようですね。

御駄賃取郎さん⇒博 橋本さん

すいません。クール・ストラッティンのモデルは判明済みですとか?知りませんでした!ぜひ、ゼゼ是非!おおしえくださいませんでしょうか?m(_ _)m
同世代のツラよごしの御駄賃でした。。。

博 橋本さん⇒御駄賃取郎さん

これもタネを明かせばルース・メイソン。
以下は与太郎の私の知る限りのところです。今となっては、皆出所不明の、何年かの間に溜まった情報の寄せ集めです。
ある日、ルース・メイソン、フランシス・ウルフ、リード・マイルスの三人が連れ立って昼食に出た際に撮影したとのこと。
彼女は元々ラジオのDJをしながら、手伝いがてらブルーノートの事務所に出入りしていた存在だった様ですね。
以前発売された “The Complete Cool Struttin’ Session” と称するCD があります。「向かって右方向に歩んで行く脚」をとらえた別テイクの写真をジャケットに仕立てているCDです。
このCD の解説の中にも撮影の経緯と別アングルのカットが数点掲載されていたと思いま。残念ながら今、手元にありません。掲載された写真にはモデルの顔の写った物はありません。
こんなところです。いつもの様に事務所にいた三人が昼食に出たついでに撮り溜めておいた写真だったという事でしょうか。

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博 橋本さん
ライナーノーツのコピー&郵送ありがとうございました。

御駄賃取郎さん
『クール・ストラッティン』のジャケットとその足のモデルに関してのお話、もうお調べになってご存じな状態になっているかもしれませんが、野暮を承知で、改めて、そのエピソードを書かせていただきますね。

『クール・ストラッティン』のジャケット写真は、プロデューサーのアルフレッド・ライオンとデザイナーのリード・マイルスがジャケットのデザインについて考えていた際、ちょうど行き詰まりを感じ、気分転換に昼食へ出かけることにしました。
その道中、何気なく撮影された一枚、あるいは、打ち合わせ中にふと閃いたリード・マイルスが女性のアシスタントに「君ぃ、ちょっと店の外に出て歩いてくれないかね?」とお願いして、歩いているところをパシャッと撮影したものが、あの写真になったそうです。場所はニューヨーク五番街、ロックフェラー・センターのプラザの前あたりだといわれています。

この写真のモデルについては、いくつかの説があります。
デザイナーのリード・マイルスのアシスタント(名前は不明)だったというのがすでに定説にはなっていますが、中には「ライオン女房説」を唱えている人もいたようです。

「彼女はアルフレッド・ライオンの2番目の妻、ルース・メイソンだった」という説です。
アシスタントの女性が黒のタイトスカートにハイヒールという服装をしているのは不自然だ、というのが「ライオン女房説」を唱える方々の主張の根拠のようです。

でも、まあそれはないでしょうね。
だって、社長お気に入りの女性(奥さん)をデザイナがーアシスタントとして連れ回そうものなら、ライオンが「人の女房をアシスタントにして自慢している奴にロクな奴はいない」と御駄賃節を炸裂させるに違いないからです(笑)。

とはいえ、こうして偶然の思いつきで生まれたこのジャケ写はやっぱり良いものですね。
周到に計画されたものではなく、何気ない発想からから生まれ、ささっと撮影されたものが(撮影後トリミングされたり黄色っぽい色味になったにせよ)結果的には、ある意味モダンジャズを象徴するかのようなアイコン的存在にまでなったのですから。

とここまで書いたのですが、暇だったので、ちょうど村上春樹の分厚い本を読んでいて気分は村上春樹だったので少し書き直してみました(笑)。

やれやれ、まったく朝からついていない。
玄関を出た瞬間から、僕はいやな予感がした。
駅へ向かう途中、雨に降られた。傘はない。まるでサブコンシャス・リーのコニッツのように冷えたシャツが肌に張りつく。やれやれ、これでは一日が始まる前から終わってしまったようなものだ。

カフェに入ると、彼はすでにいた。左手をほっぺたに当てて、しばらく思案していた。僕はその間、ずっと店の奥のショーケースにポツリと残されたブルーベリーマフィンを見つめていた。そして色褪せた古いカウント・ベイシーのレコードのジャケットを凝視しながら、彼が次の言葉を発するのをじっと待っていた。

「クール・ストラッティンのジャケットってさ、どうやって撮られたか知ってるか?」

彼はようやく口を開いた。

「いや、知らないね」と僕は答えた。

「つまり、こういうことだ。リード・マイルスが、デザインに行き詰まって昼飯に出かけたんだ。その時、リード・マイルスがアシスタントの女性に『君ぃ、ちょっと歩いてみてくれないかね?』って頼んで撮ったとか。場所は五番街、ロックフェラー・センターのプラザの前あたりだそうだよ」
僕は冷めたコーヒーをひと口すする。「モデルは誰だったんだ?」
「それがね、説はいくつかある。リード・マイルスのアシスタントだったというのが定説なのだけれども、中には『ライオンの奥さんだった』なんて言う人もいるんだ」
やれやれ、と僕はため息をついた。
世の中には本当に色々な考え方があるものだ。まるで複雑に入り組んだ迷路みたいに、それぞれの人がそれぞれの道を進んでいる。ある人は東へ、ある人は西へ、またある人はぐるぐると同じ場所を回っている。どの道が正しいかなんて、誰にもわからない。ただ、それぞれの道にはそれぞれの物語があって、それぞれの人がそれぞれの風景を見ている。僕に言えることはそれだけだ。毎日正確に時間を測りながらパスタを茹で、三日に一度は丁寧にシーツにアイロンをかけて、週末には年上のガールフレンドが僕の家にやってくるという、この規則ただしい決まりきったルーティンのような僕の生活だって、同じ場所をぐるぐる回っているだけかもしれないし、あるいはこの繰り返しには何らかの意味があるのかもしれない。
僕は、そんなことを考えながらコーヒーを一口飲んだ。
彼は、ぼんやりとしながら、窓の外の風景を眺めている。
表参道には、様々な人が行き交う。ちょうど昼時だ。楽しそうに笑っている人もいれば、深刻な顔で歩きスマホをしている人もいる。それぞれの人がそれぞれの人生を生きている。その人生が交錯し、時にはぶつかり合い、時には寄り添いながら、この世界は動いている。
多様な考え方があるということは、多様な生き方があるということだ。それは時に混乱を招くかもしれないけれど、同時に豊かさをもたらしてくれる。まるでジャズの即興演奏みたいに、予測不能なハーモニーが生まれる。そのハーモニーに耳を澄ませていると、僕は自分がこの世界のほんの一部であることを思い知らされる。そして、その一部として、僕は僕自身の物語を紡いでいく。
僕はカップに残った冷めたコーヒーを流し込んでこう言った。
「なるほど。そんな偶然の産物が、ジャズを象徴するアイコンになったわけか」
彼は頷いた。「人生とは往々にしてそんなものだ」
そうかもしれない。やれやれ、と心の中でつぶやきながら、僕は再び冷めたコーヒーをひと口すするのだった。

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2024年8月18日