動画「【コルトレーン超入門3】最初のおすすめアルバムは?⇒ジャイアント・ステップス」(こちら)に視聴者様よりいただいたコメントを紹介し、お返事した動画をアップしました。
コメント
永井勉さんからのコメント。
お久しぶりです・・・永井です・・・W
ロック屋さんからみたら、モードって単純にワンコードでアドリブ
を取りまくる世界観だと思います・・・!!
あほな解釈ですが、ビバップとかハードバップとか
凄く様式美を大切にしていた音世界だと思います・・・!!
しかし、ワンコードでスケールを取るとなると、頭のいいプレーヤーはドリアンだとかリディ暗だとか
色々なスケールを使ってきます・・・おっしゃるとうり多種多様なスケールを持っていないと
モードには対応出来ません!!!
しかし、ロック屋さんからしたらジミヘンこそがモードの先駆者だと思います・・・!!
永井さん、ちょっとお久しぶりかもしれません。
いやぁ、相変わらずの永井節炸裂。
ありがとうございます!
リディアンの「暗」には思わず吹き出しました。
おっしゃるとおり、ロックの視点から見ると「モード=ワンコードでひたすらアドリブを取る」というイメージが浮かびやすいですよね。
実は私も大昔は、ワンコードだけで延々と演奏を続けるなら、ジェームス・ブラウンのファンクも似たようなもんじゃねーの?と思ってたクチです。
あと、初期のキャンディ・ダルファーもファンクアレンジの《ソー・ホワット》をやっていましたね。それから、変態ベーシスト(?)のジャマラディーン・タクマも《ソー・ホワット》か《インプレッションズ》をファンクアレンジで演奏していたような記憶があります。
でも、やっぱりワンコードのファンクとは少し違うんですよね。
ニュアンスというかなんというか、何と表現していいのか難しいですが、モードにはもっと「空間」や「余白」というか、DだったらDの単純明快な響き(ギターでいえばルートと5度のパワーコードのような響き)にしばられないもっと開放的で自由な感覚が強いように感じます。
ファンクアレンジの《ソー・ホワット》は、グルーヴを重視して統制された空間を作り上げる一方で、オリジナルの《ソー・ホワット》は、もっと抽象的な「漂うような」自由が根底にあると思います。
ま、それはマイルスやハンコックなんかの場合ですが。
コルトレーンやマッコイとなると、どちらかというと「開放」の真逆の「密縮」という感じですからね。
だから「モード奏法」と一口に言っても、ジャズマンごとにそのアプローチや解釈は大きく異なるので、なかなか一言で「こんな感じの演奏アプローチだよ」と総括しにくいものがあります。
たとえば、マッコイ・タイナーのモード演奏は、永井さんが仰る「単純にワンコードでアドリブを取りまくる世界観」にかなり近い気がします。
マッコイの左手の強力で響きのテイストが把握しやすい和音の上に、右手はペンタトニックで力強く攻める感じは、ロック的とも言えますし、まさに「ガンガンくる」感があって、ハービー・ハンコックやビル・エヴァンスとはまた違ったニュアンス系アプローチというよりかは、明らかにパワー系アプローチですよね。
ロック好きには刺さる演奏なんじゃないかと。
表面上の音の肌触りやアプローチの違いはあるにせよ、マイルスやコルトレーンが求めた「モード」というのは、シンプルなコード進行やスケールにとどまらず、演奏者がその場で思いついたアイデアや感情を即興で解放していく、ある種の「思想」みたいなもの? というのは根っこの部分ではもしかしたら共通しているのかも。
やっぱり、ロックやファンクとの違いは、最終的には「枠の中で何を重視するか」に尽きるのかもしれません。
永井さんのようなロックの精通者(あるいはスピリチュアル・ジャズの創造主w)がモード・ジャズを聴くと、また新しい解釈や発見が生まれて面白いと思いました。
あと、永井さんの言う「ジミヘンこそがモードの先駆者」という考え方も、これはこれで面白い視点だと思いました。
ジミヘンのアプローチって、コードの中に深く入り込むというより、その一つのコードを土台にしてどこまでも広がっていくような自由さがあって、モードの持つ精神とかなり重なるところがありますね。で、ワイルドでスピード感をともなって広がっていく感じがめちゃくちゃ気持ちいですよね。
永井さんがおっしゃるジミ・ヘンドリックス先駆者説は、まあ永井さん一流の冗談だとは思いますがw(だって時代が違いますから、「ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」結成は1966年で、『カインド・オブ・ブルー』の録音は1959年)、モードの先駆者云々は置いておいても、ジミヘンのカントリーブルースに先祖返りしたような原初的な躍動もはらみつつも、広がりのある音世界は、一部のジャズマンを(それも学理に通じている)虜にした事実は非常に興味深いですね。
そう、ギル・エヴァンスです。
『プレイズ・ジミ・ヘンドリックス』という作品も残していますし(参加したアレンジはたった2曲だけど)、何より、自分のオーケストラにジミヘンを引き抜こうとしていたというのが興味深いですね。
ギルの複雑に構築された世界を破壊?あるいは、新たな価値を付け加えてくれことを期待していたのかもしれませんし、マイルスもジミヘンみたいな音楽やりたくて『1969マイルス』や『ゲット・アップ・ウィズ・イット』のような作品を作ったのかもしれませんね。
手法やアプローチは違えど、根っこの部分はマイルスにしろギルにしろジミヘンにしろ繋がっている要素が大きかったのかもしれません。
コルトレーンは分かりませんがw
永井勉さんからの返信。
私の駄話についてきてもらいありがとうございます・・・W
素晴らしいコード進行で綺麗なメロディーラインを奏でるビバップ・ハードバップ
は確かに王道なんですが、マイルスが気がついたモードって、例えばオリジナルkeyが
Dだとしてドリアンスケール・リディ暗スケール・振り事案・エオリ杏・ミクソリディアンなどを
弾いてみると何故か民族音楽的な響きになるんですね・・・!!
和声を重視する通常の音楽と違って旋律だけがくっきり前に出るんです・・・
最初にモードを取り入れたマイルスは革命児としか言いようがないと思います!!!
>Dだとしてドリアンスケール・リディ暗スケール・振り事案・エオリ杏・ミクソリディアンなどを
弾いてみると何故か民族音楽的な響きになるんですね・・・!!
そうそう、そうそう!×100w
まったくその通りなんですよね。
だから、のちにスパニッシュモードのナンバーなんかもやったりしていますからね。
おっ、これはいける!
と、マイルスなりの手応えを感じたんでしょうね。
永井勉さんからの返信。
ですよね!!
龍 大阪さんからのコメント。
モード。モードと言ったら、東京モード学園。いや、大阪でも名古屋でもよいが、最初のころのCMが衝撃的だったのを、なんとなく覚えてます。
そこで、使われていた音楽が、クインシー・ジョーンズの「ソウル・ボサノバ」。その曲名と作曲者がクインシーであったことを知ったのは、かなり大人になってから(笑)。レコード屋さんでCDの視聴コーナーがあって、それで知ったという。
ちなみに、その視聴でクインシーは買わなかったが、ジョージ・デュークの「ラブ・アフェア」を買った(笑)
というわけで、クインシーのご冥福をお祈りいたします。
さて、モードという作曲法、もしくは奏法という定義を、4小節とか8小節を同じコードで演奏するという風に非常に単純化してしまえば、電化マイルスは、ほとんどモード的手法で演奏していた。そして、他のミュージシャンのフュージョンもテーマにはコード進行のようなものはあっても、アドリブパートはワンコードとかツーコードで演奏するというのが主力になっていったように思う。そういう意味で、永井さんが言ってるように、ジミヘンドリクスもモード的な演奏をしていると言っていい。
なによりも、マイルスの自伝のなかで、このような記述がある。
——-
ジミに会ったのは、彼のマネージャーがオレに電話してきたからだ。そいつは、オレの奏法や音楽の作り方をジミに教えてやってほしいと言った。ジミは、オレが「カインド・オブ・ブルー」やいろんなところでやったことを気に入っていて、自分の音楽にジャズの要素を加えたがっているってことだった。コルトレーンが吹きまくっていた演奏も好きらしくて、確かに彼はトレーンと似たような方法でギターを弾いていた。
——-
昭和のジャズ評論家は、楽理的なことに無知な人が多いのは事実だと思う。それはそれで、音楽は理論で聴くものでは、必ずしもないので、鑑賞者としては有りなのかなと思う。ただ、たとえば絵画だとかは、遠近法とかそういう技術があって、それを崩したところにキリコだとかピカソが出たわけで、遠近法がわからんと評論もなりたたない。
そういうわけで、モードの曲というと「ソーホワット」「インプレッション」しかないと思ってる人が多いようだが、他にモード手法で作られた曲をいくつか。
ビートルズの「ノルウェイの森」(本来の意味はノルウェイ製の木製家具みたいです)。ドリアンだかリディアンだかしらんがモードで作った曲のことは間違いない。
「フラメンコ・スケッチ」カインドオブブルーのB面の曲だが、スパニッシュ・モードもしくはスパニッシュスケールと呼ばれ、フラメンコの音楽で使われる。いわゆる「ハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロー」hmp5↓、の短調のドミナントに使われるスケールにナチュラルマイナーの音を付け加えて作っているらしい。「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」の一曲目の「ファット・タイム」もスパニッシュ・モードに変わるパートがあるように思う。
「処女航海」Maiden Voyage。ハービーはインタビューなどで、一番気に入ってる曲だと言ってる。いわゆるsus4。サスペンション4thってことで、Dのsus4だと、D,F,A,Cとくるところ、FのかわりにGを使用するとルートのDとGがⅣ度インターバルになるというコード。Am7 on D という分数コードとほぼ同じと考えてよい。これはネットで調べると、Am7のサブドミナントとD7のドミナントの中間的な機能を持つとのことだ。そして、各構成音を並べ替えるとⅣ度重ねのヴォイシングになり、トーナリティが薄れる。初めてのヨットで大海原に航海に出る、茫洋たる気持ちが、ハービーとしては、うまく表現できたということだろう。
「フリーダム・ジャズダンス」。マイルススマイルズの中の一曲。これはコード的にはひとつしかないようだ。エデイーハリスの作曲となっている。リアルブックではカッコしてB♭7、となっている。まあ、B♭のミクソリディアンなんだろう。ここでは、トニーのドラムに注目。ほとんど16ビート。それにポリリズムを混合しているような、リズム的には前衛的な曲。
マーカス・ミラーの「ブラスト」。アラビアン・モードで作ったメロディーをスラップベースでパンチを効かせて弾くという、かなり攻めた曲。ネットで調べたところ、スパニッシュ・モードに、メロディック・マイナーの構成音を加えているみたいだ。
そういえば、マイルス自伝にそのようなこと書かれていましたね。
すっかり忘れてた…。
絵画の遠近法のたとえ話は秀逸ですね。
その通りだと思います。
《ノルウェイの森》はGミクソリディアンですね。
ベースは単純なんで弾いててあまり面白くない(?)ですが、ギターの人は弦をビョインみょいんと掻き鳴らすのが気持ち良いみたいですw
2024年11月11日