【雑誌読み】ほれっす!

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『スイングジャーナル』の2008年8月号のホレス・シルヴァー特集の一部、『トーキョー・ブルース』についての記事(ジャケ写に写る女性のエッセイなど)を読んだ動画をアップしています。

コメント

高松貞治さんからのコメント。

CDショップで何か変なジャケットのCDがあるんだと思って、この動画のCDを買ったんですが、どうして、和服の女性がいるんだろうかと、長年不思議でした。そして今回の動画で謎が解けました!今まで買ってから1回も聞いてなかったので、この機会に聞いてみようかと思います😊

>CDショップで何か変なジャケットのCDがあるんだと思って
いや〜、まさに「その気持ち、よく分かります……!」

私もかつて、遠い昔、まだジャズに入門したての頃、店頭で見たあのジャケットに違和感、というか言っちゃ悪いけど、「B級感」みたいなものを抱えてまして、これもブルーノートのアルバムなのねぇ、なんて思ったりしたものです。
何せ、油井正一さんの新潮文庫のブルーノートの本にはブルーノートに駄作なし!みたいなことが書かれていたんですよ。でも、なんかもうジャケットから駄作感がぷんぷんしたんですよ……(聞いてもいないのにね)。

和服の女性に囲まれたホレス・シルヴァー?
和服着てるけど、ブルー・スリーの頃の香港映画に出てくるアジア女優が和服着てるんじゃない?って思ったのは写真から醸しでるテイストからかも?
写真の色合いというのもあるかもしれませんが、大雑把な感じの日本庭園っぽい本当の日本庭園じゃない風景がアジアン・カンフーなイメージを感じたのかもしれません。

あるいは、アメリカの田舎の鉄板焼き屋さん(日系二世、もしくは三世の方がやっているような)とか、あるいはグアムとかサイパンとかオーストラリアの空港近くにある「和食です!」「日本テイストです!」と掲げたお店の店内に飾ってありそうな記念写真のような、“日本でありながら、どこか日本じゃない”ような、書かれてる平仮名や漢字が違うだろ!と突っ込みたくなるようなヘンな日本語が写真の近くに添えてあるような(添えてないけど)、そんな摩訶不思議な雰囲気を感じてしまっていたんです(笑)。

なので、存在は知っていても、なかなか手が伸びなかった……
完全にジャケ買いを阻むジャケ、ですよね。

いや、逆に「ソソられる」と感じて買った人もいるかもしれませんが。特にLPのサイズだとそういう雰囲気醸し出流のかもしれませんが、なにせ時代はCD時代でしたから…。

でもある時、勇気を出して買ってみたんですよ。
で、聴いてみたんです。

そしたら、やっぱり「ニッポン」はまるで感じない(笑)。
あの和服の雰囲気とか、尺八でも鳴るのか? と一瞬期待してしまうと、まったくそんな気配はなく、完全にホレス・シルヴァーの、あのどこまでも「ホレス節」でした。『ソング・フォー・マイ・ファーザー』のB面と差し替えても気づかない人もいるんじゃないかな?(冗談)ってくらいの、どこを切ってもシルヴァー金太郎飴(良い意味で)でした。

つまり、演奏の充実度はなかなかのもの。

特にタイトル曲「Tokyo Blues」は、ある意味ホレスらしい“記号的”な日本感(五音音階っぽさとか)をうまく消化してて、あ、これはこれでシルヴァー流の(かどうかはわかりませんが、とりあえずシルヴァー流の)のジャパニズム解釈なんだな、という「気分」と「気持ち」だけはなんとなく受け止めました。

正直、「Tokyo Blues」というよりは、「Tokyo-Inspired Funky Postcard」くらいの距離感なんですよね(笑)。
まるで空港の免税店で売ってる「寿司キーホルダー」みたいな愛らしさというか……
“本気”で日本を描こうとしているというよりも、ホレスなりの「おみやげファンキー」って感じで(なんて書くとこのアルバム愛聴家から怒られそうですが)、これはこれで妙な愛着が湧いてきたりもします。

しかも、今回たまたま古い『スイングジャーナル』を引っ張り出して読んでいたら、なんとこのジャケ写の「別テイク」があるではないですか!
ニューヨークの日本庭園で撮影されたもの、というのは知ってましたが、CDジャケットの小さな写真よりも、雑誌の大きめな写真を見ると、より「日本じゃない感」が出ていて、味わい深いものがありました。

それにしても、今回高松さんが「今まで1回も聴いてなかった」とおっしゃっていたのが、逆にすごく良いタイミングだったと思います。

あの時代の、ちょっと不思議な熱気と距離感のある「日本らしさ」が、今聴くとどこか味わい深いんですよね。
今回、昔の『スイング・ジャーナル』をパラパラとめくってみることによって、「ずっと放置してたCD」を聞いてみようかなと思わせてくれる一つの契機になったことは悪くないことかな、と。

聴いて「うーん?」と思ってもいいし、「意外といいかも」となってもいい。
どっちでも楽しい。
ジャズってそういう“ふとした再会”が嬉しい音楽だとも思ってます。

ぜひ、この機会に再生ボタンを押してみてください!
そしてまた、感じたことなどあればぜひ聞かせてくださいね😊

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2025年4月17日 18:02