【古雑誌読み】せにょぶ

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『スイングジャーナル』2008年8月号の「ホレス・シルヴァー特集」の一部を読んでみた動画をアップしました。

コメント

高松貞治さんからのコメント。

ジャズ批評を読んでいたら、中平穂積さんが亡くなったと、載っていたので、いつか紹介しようと思っていた記事があって、それはある雑誌で、書斎の特集があって、谷沢永一、吉本隆明などそうそうたる人たちの書斎が紹介したんですが、その中で、音の書斎があってもいいんじゃないかと、中平穂積さんの書斎が紹介していて、オーディオに1千万円かけて、ヨーロッパから買ったアンティークの椅子など調度品を買ったと言うことでした。またあるところに、レコードを3000枚、CD 1000枚を寄付したらしいです。中平穂積さんが言うには、自分はコレクターではない!レコードを300枚あれば充分!後、そばを食べて、コーヒーを飲めば、1日のオーディオの電気は数百円で済む、こんな安上がりの事はない!と雑誌で語っていました。今の若い人はこういう生活を最初から諦めてる、せめて自分の生活を見て、何か参考になれば、と語っていました。自分もこうありたいと思いました😂ちなみに、書斎で1番高い物は、マイルス・デイヴィスの絵画だそうです。

中平穂積氏、といえば……真っ先に思い浮かべるのは、やっぱりあの鮮烈な写真たちですね。
ただジャズマンを「撮った」のではなく、音や周辺の熱気ごとフィルムに焼き付けてしまったような、そんな圧倒的な迫力。構図もさることながら、ジャズマンたちの表情も皆素晴らしい!
まるで「ジャズだっ!どうだっ!」と一枚の写真がこちらに向かって吠えてくるような?そんな感じがします。

「ジャズなビジュアル」といえば、他にはブルーノートのジャケットが思いうかびます。しかし、ブルーノートの「ジャズを感じるジャケット」の多くは、カメラマンのフランシス・ウルフが撮影し、その写真をデザイナーのリード・マイルスが大胆にトリミングしたり(オデコをチョッキンしたりw)、独特な風合いの色を載せたり、印象的な書体でタイポグラフィしたりと、二人の優れた才能のコラボレーションによって「ジャズな空気」を創出したのに対して、中平さんの場合は、ただカメラのシャッターを一発切るだけで、濃厚な「ジャズな現場」をビシッと切り取ってしまう。「空間察知力」と「空間切り取り力(プラス瞬発力)」の達人ですね。
もし世が世なら、剣豪になっていたかもしれませんね。

それにしても、「300枚あれば充分」という中平さんの言葉。
オーディオにこだわり、椅子にもこだわりながら、「モノを溜め込むこと」には執着しない生き方は素敵ですね。
蕎麦とコーヒーで、オーディオの電気代は数百円──なんとも洒落た、贅沢な生き方です。

そして、高松さんが書かれていた寄付(寄贈?)の話ですが、村上春樹氏が母校の早稲田大学に直筆原稿やレコード、出版物など、1万点以上の資料を寄贈した話を思い出しました。

あと、鎌倉のかまいちさんのことも同時に思い出しました。

かまいちさんは、来月引っ越すにあたり、広い家にお住まいの方には「爆音ジャズオーディオハイパーかまいちシステム」を無償で譲られたとのこと。
さらに、入手困難なレア盤を含む何百枚ものレコードコレクションを、若いジャズファンたちに無償で寄付されたそうです。
「引っ越すから」という一言であっさりと。
いやぁ、太っ腹!
というよりも、そこにはジャズへの愛情と、後世への温かい眼差しがにじんでいるような気がしてなりません。
私自身も数年前、床が抜けるんじゃないかというほど(ちょっと誇張です)大量のジャズ雑誌や、今や絶版となり入手困難な粟村さんの本を、ありがたく譲り受けました。

実は、ついさきほども、かまいちさんと電話でお話していたのですが、
その時、私は思わず言ったんです──
「これ、もう文化遺産の継承ですよ!」って。
いやぁ、本当に太っ腹というか、後身の育成にものすごく熱心な方なんですよね。
ある意味、若きジャズ好きの「ジャズ人生」の先生といっても過言ではありません(あ、私はもう若くありませんけど)。

好きなものに囲まれて生き、最後はきちんと「次の人たち」へ手渡していく。
そんな循環を、実際に体現している人たちを目の当たりにすると、ああ、自分もこうありたいなぁと、しみじみ思います。

──もっとも、私の現状はというと……
「これ、もう要らないかもな」と思う物に囲まれながら、「いや、もしかしたら10年後には役立つかも」などと色々なところに置いたり押入れの中に押し込む日々でして、もはや部屋と押し入れと本棚は、膨張し続ける小宇宙です(涙)。

でも、やっぱり目指したいですね。
本当に愛せるものだけに囲まれたシンプルライフ。

本当に好きなものだけに囲まれた生活のフォーマットが確立された人は真に豊かな人だと思います。

あらためて──
中平穂積さん、88年の素晴らしいご生涯に、心からの敬意と感謝を。
ご冥福をお祈り申し上げます。

そして、かまいちさんにも感謝!
略して「かまんしゃ」(←ナンジャそりゃ)

2025年4月28日 12:18